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CRMとSFAの違いとは? 機能の比較と導入・選び方のポイントを基礎から解説
更新日: 2024年4月22日
顧客一人ひとりに最適なマーケティングや営業活動を実施し、顧客満足度を向上させるには、顧客情報を一元管理し、組織的に有効活用できる体制を整備するのが重要になります。そのために役立つおすすめのソリューションがCRM(顧客管理システム)です。
本記事では、CRMの概要や、マーケティングにおける必要性やメリット・デメリット、SFAやMAとの違いなどについて分かりやすく解説します。製品選びのポイントなども紹介するので、CRMに関心のある方や顧客情報の管理運用に課題のある方は、ぜひご参考にしてください。
目次
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CRMとは「Customer Relationship Management」の略で、日本語では「顧客管理システム」と呼ばれるITツールです。CRMは顧客情報を一元管理し、リードや顧客との関係を育成するために役立てられます。その結果、ユーザーは顧客管理の効率化、顧客満足度の向上、データへのアクセス性の改善といったメリットを得られます。
CRMが企業にとって重要なのはなぜでしょうか。以下では、CRMの重要性と注目されている背景について解説します。
インターネットやSNSの普及によって簡単に情報を取得できるようになった結果、現代の消費者のニーズや価値観は多様化するようになりました。このような状況下で顧客一人ひとりに満足度の高いサービスを提供するには、顧客のニーズがどこにあるのかを詳細に把握し、パーソナライズされた施策を実行していくことが欠かせません。
そこで重要性を増しているのが、顧客情報を一元管理できるCRMです。CRMには顧客の年齢、性別、購買履歴、問い合わせ履歴など、顧客ニーズの把握に役立つ膨大なインサイトを蓄積できるので、多様化した消費ニーズへの対応に役立ちます。
現代の市場では類似の商品・サービスで溢れており、商品・サービスの品質や価格の違いによって競合他社から差別化するのが難しくなりました。その結果、新規顧客を獲得するためのコストは増加傾向にあります。そうした状況では、新規顧客獲得を主軸にするのではなく、既存顧客を維持し、顧客一人ひとりのLTV(顧客生涯価値)を上げていくという選択肢も有効になりつつあります。また、サブスク型のサービスが増えているのも、こうした傾向に拍車をかけている一因です。
既存顧客を維持するためには顧客満足度や顧客ロイヤリティを向上させる必要があります。後述するように、CRMには顧客情報の管理に加え、顧客分析やマーケティング支援、カスタマーサポート支援など、既存顧客との関係を維持するために役立つ多彩な機能が搭載されているため、現代のビジネスニーズを満たすソリューションとして需要が高まっています。
CRMは顧客情報を単純に蓄積できるだけでなく、そのデータを効果的に活かすための多種多様な機能が搭載されているのが特徴です。以下では、CRMの主な機能を紹介します。
顧客管理はCRMの核心的な機能です。CRMでは顧客の氏名(企業名)、年齢、性別、住所等々の基本的なデータをはじめ、取引履歴やカスタマーサポートへの問い合わせ履歴、商談のスケジュールなど、あらゆる顧客関係情報を管理できます。CRMに蓄積されたデータを営業チームはもちろん、他部署ともリアルタイムに共有できるので、企業全体で顧客情報をビジネスに役立てられます。たとえば、CRMを使って顧客をセグメンテーションすれば、より良いサービスを効率的に顧客へ提供できます。
CRMにはそこに蓄積されている顧客情報に基づいて、多角的な分析やレポーティングする機能が搭載されています。こうした機能を使って、たとえば収益性、顧客維持率、マーケティングキャンペーンの効果などを可視化すれば、マーケティング戦略を策定する際に効果的なアプローチを考えやすくなるでしょう。CRMは、データに基づいた根拠あるマーケティング(データドリブンマーケティング)を実施するための土台となるソリューションです。
CRMの中には、各顧客の属性に基づいてメールやクーポンの自動配信など、プロモーション管理ができる製品もあります。こうしたワークフローの自動化により、営業担当者は時間を節約し、重複した作業を避け、営業プロセスの各段階で適切なアクションを完了させられます。配信したものが顧客にどれだけ開封されたかも追跡できるので、マーケティングキャンペーンの改善にもつながります。
CRMにはカスタマーサポートに役立つ機能も搭載されています。具体的には、顧客からの問い合わせやその対応の履歴を管理可能です。Webフォーム、メール、電話など、複数のチャネルにわたる顧客からの問い合わせを一元管理することで、応答時間の短縮や重複対応の抑止などが期待できます。また、CRMではヘルプページや問い合わせフォーム、満足度アンケートの作成なども可能です。こうしたCRMの機能を活用すれば、顧客ごとにパーソナライズされたカスタマーサポートがしやすくなり、顧客満足度の向上が見込めるでしょう。
CRMの多彩な機能を活用することで、企業はどのような恩恵を受けられるのでしょうか。以下では、CRMを利用するメリットを紹介します。
CRMのメリットその1は、業務効率化です。CRMを使用すると、チャネル全体のすべての顧客データを統合管理できます。これによって顧客データの管理やアクセスを効率的にできるようになり、必要なときに必要なデータを確認しやすくなります。特に、昨今ではモバイル対応したクラウドCRMも多くなっているので、外出先でもスマートフォンなどを使っていつでも顧客情報を確認できるのは大きな利点です。
また、CRMのデータに基づいて顧客を分析すれば、利益率や成約見込みの高い顧客を特定できます。先に紹介したプロモーション管理機能などを使えばメール配信なども自動化できるので、営業効率を大きく向上させられます。
CRMのメリットその2は顧客満足度の向上です。CRMを導入し、そこに顧客情報を蓄積していけば、充実した顧客プロファイルを構築できるようになり、各顧客のニーズや価値観などを深く理解できるようになります。
これにより、顧客一人ひとりに最適な提案をタイムリーにできるようになり、その結果、顧客満足度やLTVの向上が可能です。各顧客に最適な提案ができるようになることは、営業やマーケティングにかかるコスト削減にもつながります。
CRMのメリットその3は顧客情報の共有がしやすくなることです。顧客の個人情報や対応履歴などは各担当者が抱え込みがちですが、そのような状況は業務の属人化を招き、適切なマネジメントを困難にします。また、部門ごとに別々のデータベースを使っていると、部門間の意思疎通に齟齬が生じやすくなり、組織として整合性のとれた動きが難しくなるでしょう。
その点、CRMを導入し、そこに顧客情報を集約することで、全社的に顧客情報を統合し、誰もがリアルタイムに必要な情報にアクセス可能です。これにより、たとえば各営業担当者の商談の進捗状況を管理者が確認し、必要に応じて適宜フォローしたり、マーケティング部門やカスタマーサポート部門などと連携して、より質の高いサービスを提供したりしやすくなります。
上記のようなメリットがある一方で、CRMを導入する際にはいくつかの点に注意が必要です。以下では、CRMを利用するデメリットを紹介します。
CRMのデメリットその1は、即時的な効果は見込みにくいことです。CRMは、導入したら即座に業務が一変したり売り上げが向上したりするようなソリューションではありません。CRMの性質上、特に顧客データが不足している企業は、すぐに導入の効果を実感することは難しいでしょう。この場合、まずはCRMに入力する顧客データを充実させることから始めなければなりません。
また、顧客データが充実している場合でも、そのデータを分析して営業やマーケティングなどの施策へ反映し、顧客がその施策に満足してLTVを向上させていく...といったプロセスを経るには、やはり相応の時間が必要です。したがって、CRMを導入する企業には中長期的な視点が求められます。
CRMのデメリットその2は、初期コストが必要なことです。製品にもよって差はありますが、CRMを導入するには初期費用やライセンス費用などそれなりに高額の経済的コストがかかります。
また、これまでスブレッドシートや別々のデータベースで顧客情報を管理していた場合は、それらの情報をCRMに統合していくための作業も必要です。ツールを導入しても使いこなせなくては意味がありませんので、従業員の教育も含めてCRMを有効に活用できる体制を整えることが重要になります。
CRMと関連性の高いITツールとして「SFA」というソリューションがあります。SFAは「Sales Force Automation」の略称で、日本語では「営業支援システム」と呼ばれます。営業活動の効率化や自動化などを支援するのがSFAの役割です。CRMもSFAも営業活動を効率化するという大きな目的は共通しています。では、両者の違いはどこにあるのでしょうか。
簡単に言うと、CRMとSFAの主な違いは、SFAが顧客を獲得するツールである一方で、CRMは獲得後の顧客との関係を良好に維持・管理するためのツールであることです。SFAでは商談の進捗管理や、契約案件の報告、個人や部門全体のノルマ達成率の確認、営業日報や見積書の作成など、日々の業務をサポートする機能を利用できます。これに対してCRMのメイン機能は、顧客に関するデータを収集・一元管理して、今後の関係維持に役立てることを目的にしたものです。
CRMとSFAはどちらが優れているというよりも、連携することで互いに補完し合える関係であると理解することが重要です。実際、CRMの中には、SFAの機能も搭載した統合的な製品もあります。
CRMとMAの違いも確認しておきましょう。MAとは「Marketing Automation」の略称で、新規顧客を開拓したり、顧客とのコミュニケーションを自動化したりできるツールです。
CRMとMAの違いは、MAが見込み顧客を発見・アプローチし、リードを育成していくためのソリューションであるのに対し、CRMは顧客化した後の関係維持を担うことにあります。その意味では、CRMとMAの違いは、CRMとSFAの違いと類比的です。とはいえ、MAが担うのは、SFAよりもさらに前段階として位置づけられます。また、CRMやSFAが主に営業部門で使用されるのを想定しているのに対し、MAはマーケティング部門で使用されるのを想定したソリューションであることも異なる点です。
MAとCRM、あるいはSFAも、やはり相補的な関係にあります。MAとCRM、SFAを連携させることで、たとえばMAで育成したリードをSFAに引き継いで商談の成立に役立て、その後の関係維持をCRMでカバーしていく...といったように、マーケティング部門と営業部門がより連携できる体制を構築できます。
CRMと一口に言っても実際には多くの製品があるので、製品選びに悩む方も多いことでしょう。そこで最後に、自社に適したCRMを選定するためのポイントを紹介します。
まずは、自社がCRMに要求する機能を十分に検討しましょう。要件を満たしていなければ不都合が生じますし、逆に要件以上に過剰な機能がついた製品を導入すればコスト面で無駄が生じやすくなります。「なければならない機能」と「あればいい程度の機能」というように、優先順位を付けて考えるのが機能要件を明確化する際のコツです。
また、いくら機能が充実していても、実際に製品を使用する現場の人材が使いこなせなければ高い導入効果は見込めません。操作性が悪い製品を導入した結果、結局現場へ浸透せずに宝の持ち腐れになってしまうというケースもありえます。したがって、製品選びの際は現場の人材のITスキルなども考慮した上で、使いやすい製品を選ぶのが大切です。トライアル用の無料版などがある製品なら、まずはそれを試してみるとよいでしょう。
他のツールとの連携性も確認すべきポイントです。顧客情報はさまざまな用途に役立てられるため、CRMは他のツールと連携して活用されることが多くあります。たとえば、上記で紹介したSFAやMAなどもその一例です。
したがって、CRMを導入する際には、外部ツールに対する連携機能がどれほど充実しているか把握しておくことが大切です。さしあたっては自社ですでに活用している既存のツールや、今後導入予定のツールとの連携性を優先的に確認して選択することをおすすめします。
サポート体制の充実度も重要な点です。特にCRMの導入や運用に不慣れな企業の場合、これは優先的に確認すべきポイントになります。
たとえば、窓口の営業時間、ベンダーとのコミュニケーション手段、トラブル対応の迅速さなど、口コミなども調べてサポートの充実度をチェックしましょう。海外企業の製品の場合は、サポートやマニュアルなどが日本語対応しているかどうかも注意が必要です。
製品のセキュリティレベルも忘れてはならないポイントです。CRMには顧客の個人情報なども集積されていくため、セキュリティの堅牢性は非常に重要です。万一、顧客の個人情報が不正流出してしまえば、自社の社会的信用は大きく低下し、売り上げにも悪影響が出てしまう恐れがあります。
ただし、情報セキュリティを堅牢にするためには、ツールの機能だけでなく社員のセキュリティ意識向上の徹底も重要です。特に、昨今ではリモートワークを取り入れる企業が多くなり、システムやデータを社外で利用する機会も増加しているのでなおさら必要性が増しています。そうした点に不安があれば、ツールの導入と併せてコンプライアンス研修などを実施することも検討しましょう。
CRMとは、顧客に関係するあらゆる情報を一元管理し、企業と顧客の関係を良好に構築・維持することを目的にしたITツールです。CRMを活用することで、企業は自社の顧客一人ひとりに対する理解を深め、顧客満足度の高い商品・サービスの提供や、費用対効果の高いマーケティングの展開などがしやすくなります。
消費者の価値観の多様化が進み、顧客ニーズの正確な把握や既存顧客の維持が重要性を増している今日、ビジネスにおいてCRMを活用する必要性はますます高まっています。顧客情報の管理や既存顧客の維持に課題を抱えている企業の方は、ぜひCRMの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
ユーソナー編集部
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