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ABM成功のために解決すべき3つの課題とは?解決のカギとなるデータ活用も紹介
更新日: 2024年6月20日
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近年、BtoB企業を中心に注目を集める「ABM(アカウントベースドマーケティング)」。
しかし、その正確な定義や活用方法について、明確なイメージを持っている方はまだ少ないかもしれません。
本記事では、ABMの基本的な概念からデマンドジェネレーションとの違い、最新動向、導入のメリットから戦略の進め方、注意点までを詳細に解説します。
ABMを導入して自社の営業・マーケティング活動の成果を高めたい方は、ぜひこの記事を最後までお読みください。
目次
ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、優良顧客となり得る売り先を予め選定し、効果的にアプローチするマーケティング手法の一つです。
よりわかりやすく説明すると、「自社に多大なる利益をもたらしてくれる企業を明確にし、ターゲットを絞り込んで集中的に営業活動を行う」手法のことを指します。ABMでは「中小企業」や「個人事業主」といったジャンルごとのターゲティングをするのではなく、「シャープ」「パナソニック」というように、企業レベルのターゲティングや顧客の選定を行います。
企業レベルで選定した後は、ターゲット企業の意思決定を担うステークホルダー・キーパーソンとの接点創出を目指し、様々な角度から関係構築を行います。
BtoBマーケティングの手法の一つとして、ABMとよく比較されるデマンドジェネレーションという手法があります。
デマンドジェネレーションの具体的な手順は以下の通りです。
デマンドジェネレーションはマーケティング部門があらかじめ見込み客を発見・育成し、受注確度を高めたうえで様々な業種業界の企業にアプローチしていく方法です。
一方でABMはあらかじめ選定したターゲットにむけて、マーケティング部門と営業部門が密な連携をとりながら、顧客に適したアプローチを様々な角度から実施するマーケティング手法です。
ABMの具体的な手順は以下の通りです。
両者は営業・マーケティング部門間での関わり方が異なりますが、受注確度の高い顧客を見つけてアプローチする部分は似ています。両方の施策を行うことで効率的かつROIの高い営業活動を実現できるので、ABMだけを実践するのではなく、デマンドジェネレーションも取り入れる企業も多いです。
ABMを提唱した米Momentum ITSMA社とABM Leadership Allianceが2022年末に合同で調査した『2022 ABM Benchmark Study』によると、B2Bマーケターは引き続きABMをマーケティング戦略の前面に押し出しており、ABMは4年連続で施策の優先順位トップに立っています。2022年のマーケティング予算のうち平均的に28%の予算がABMに充てられており、この傾向は2024年も継続する可能性が高いです。
この調査は米国企業を対象とした調査結果ですが、トレンドの流れが大きく欧州から日本へと移り変わることを考えると日本でも近いうちに同様の傾向が表れることは十分に考えられます。事実、当社へのABM関連のお問い合わせも近年増加傾向にあります。
ABMが注目される背景には、広告予算の増加があります。株式会社電通の調査によると、2022年の日本における総広告費は、過去最高の7兆1,021億円(前年比104.4%)となりました。
これには様々な要因がありますが、デジタルマーケティングの興隆に伴うインターネット広告費の増加と、顧客獲得単価の増加という流れは加速しています。広告予算の増加に伴い、重要ターゲットにフォーカスを絞り効率的に顧客創出をはかるABMが注目されています。
また、SFAやMAといった営業支援ツールの普及もABMが注目される要因の1つです。これまで実現の難しかった部署間の連携が、データを一元管理できるシステムの導入によって以前に比べ実現しやすくなったことも、ABMが注目されるきっかけとして考えられます。
ABMの導入は、どのようなメリットをもたらすのでしょうか。ここでは大きく3点ご紹介します。
1つ目は、リードタイムの短縮です。
ABMは見込み客を選定してからアプローチする手法であり、さらにステークホルダー・キーパーソンにしぼって接点を構築していく手法であるため、短いリードタイムで成果を出すことが期待できます。
特に、商品単価が高く受注までに時間がかかるような商材を扱っている場合であれば、ABMを実践することで大きなリードタイムの短縮につなげられるでしょう。
2つ目は、ROIの向上です。
ABMを適切に実践することで、リード獲得にかかる広告費や営業活動費を削減することができます。
また、失注する可能性が高い顧客へのアプローチ数を減らし、空いたリソースをより確度の高い顧客に集中させることが可能です。
商談や受注につながりやすい顧客に絞りこんだ営業活動ができるので、ROIの向上が期待できます。
3つ目は、顧客ロイヤルティの向上です。
ABMはターゲット企業を特定した上で、ステークホルダーやキーパーソンに向けて顧客の課題解決につながるような提案を行います。結果的にそれが顧客目線での提案につながり、「ただ営業するだけではなく本気で自社のことを考えてくれている」と感じてもらえるのです。
事業を存続させるためには新規顧客獲得ももちろん重要ですが、リピーターを増やし、顧客ロイヤルティを高めLTV(顧客生涯価値)向上を目指すことも非常に重要です。ABMの実施は、LTV向上に大きな効果をもたらすでしょう。
ここからは、ABM戦略を実行するための手順を見ていきましょう。大きく4stepで解説します。
ABMは、予め設定したターゲットを元に自社に恩恵をもたらしてくれる優良顧客を特定するマーケティング手法です。よって、ターゲットアカウント(企業)の選定がABMの成果を握っているといえます。
ABMでターゲットを選定する際は、「自社に利益を生み出してくれる企業か」を基準とします。以下の基準を参考に、自社の優良顧客を明確にしていきましょう。
このような選定基準を元に注力すべき顧客像が見えてきたら、次に対象企業の意思決定者であるキーパーソンを探ります。
キーパーソンは企業のHPの会社概要にある役員や社員情報、人事異動情報、有価証券報告書などから情報を手に入れることができます。
ターゲットアカウントの選定には、企業ニュースや業界トレンドといった業界全体の情報から、業種や売上高・従業員数などセグメントに必要な情報が必要になります。なるべくきれいなデータを収集・統合・分析できる環境を整えておきましょう。
参考記事:ABMで取得するべき企業情報とは?データ取得やマネジメントの方法も解説▶︎
ターゲット企業やキーパーソンを洗い出すことができたら、顧客が商品を見つけてから購入するまでの感情や行動の変化を時系列で一枚のシートにまとめる「カスタマージャーニーマップ」を作成しましょう。
カスタマージャーニーマップを作ることで、「顧客目線でアプローチを考えられる」「チーム全体で認識を共有でき、アプローチにばらつきがなくなる」といった効果が期待できます。
まずは、顧客にとっての以下のような悩みを整理していきます。
これらを「商品を知る前の認知段階」「商品を知り、自社で効果を試したくなった興味段階」「商品を欲しいと思う購買段階」というような段階ごとに分け、それぞれの段階で顧客がどのような悩みに直面し、どのように解決するのかを1枚のシートにまとめていきます。
カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客のその時々の感情や行動を理解することができるため、顧客の状況に応じた適切なアプローチが可能になります。
続いて、ターゲット企業のキーパーソンが日常的に活用しているチャネル(媒体)を分析した上で、効果の出やすいチャネルを選定しましょう。キーパーソンと接点を作ることができるチャネルの例は以下の通りです。
例えば、ターゲット企業の取引先が東京23区内に本社を構える場合、移動手段はタクシーや電車がほとんどと考えると、東京23区間に交通広告を出すことでキーパーソンとの接点を作ることが期待できます。
自社の商材の特性等も加味した上で、自社にとって最適なチャネルを選定しましょう。複数のチャネルを組み合わせることも効果的です。
最後に、チャネルに合わせて効果的なキャンペーンや営業活動を行います。
施策を実行する際にはただ闇雲に実施するのではなく、後から分析・改善ができるように営業活動やキャンペーン結果をモニタリングしておきましょう。
活動結果を集計する際は、自社内でエクセル等を活用して費用を抑えながら実施することもできますが、ABMはマーケティング部門と営業部門の連携が重要な施策です。ABM機能を搭載した専用ツールを自社内で活用することで、より大きな成果を生み出すことができます。
参考記事:ABMツールとは?導入の重要性や企業にもたらす3つのメリットを解説▶︎
ABMを導入するにあたり、注意すべきポイントがいくつかあります。ここでは大きく3点ご紹介します。
1つ目は、ABMの目的や戦略を明確にすることです。
ABM施策は比較的企業規模の大きいクライアントに対して実施することが多く、LTV向上につなげられるような継続性のある商品やアップセル・クロスセルのできる商品を持っていなければ効果は得られにくいと考えられます。
ABMを導入することで、必ずしも新規顧客が増えて売上が上がるというわけではありません。まずはABMの導入が本当に必要なのか見極める必要があります。
ABMを導入する際には、ターゲットアカウントの選定に時間をかけることも大切です。
ターゲットアカウントの選定はABMの軸と言っても過言ではなく、選定を誤ると成果が出ない可能性があります。よく言われる「とにかくやってみて軌道修正をする」方法はABMには通用しないため、まずはターゲットアカウントの選定に時間をかけましょう。
時間をかけるポイントとしては、「データの収集」「自社データと企業全体のデータの統合」「自社顧客を分析し、同じような属性や悩みを持つ企業の選定」などが挙げられます。
3つ目は、市場分母全体を可視化したうえで戦略を立てることです。
ターゲットアカウントの選定や、選定したターゲットへのアプローチ方法決めといった場面でも、市場母数全体の可視化は欠かせません。
自社内で対応する場合は、法人番号公表サイトや登記簿を使うといった方法が考えられます。
ABMツールを導入する場合であれば、分母とするデータ件数やセグメント軸の多さを導入基準に含めると、より効果的なABMを実施できるでしょう。
ABMの戦略立案を進める上では、フレームワークを活用することも有効です。ここでは大きく3点ご紹介します。
5フォース分析は、以下の5つの要素を分析し、業界のことを徹底的に分析するフレームワークです。
これら5つの要素について理解し適切に評価することで、企業は自身の立場を明確にし、競争優位性を持続するための戦略を立案できます。
ここでは、コーヒーショップを対象に5フォース分析を実施した例を考えてみましょう。
分析する対象としては、以下の通りになります。
これらの要素を一つ一つ詳細に分析することで、予めリスクを察知した上で戦略を立てていくことができます。
3C分析とは、顧客(Customer)、競合他社(Competitor)、自社(Company)の3つを分析し、自社の立ち位置や市場の勝ち筋を見つけるフレームワークのことを指します。3つのCの頭文字をとって、3C分析と呼ばれています。
3C分析を行うことで、市場や競合・自社の立ち位置を把握した上で売れやすい商品を訴求したり、マーケティング戦略立案に役立てることができます。
インターネットが普及した現在の市場はニーズの変化が早く、その時々に応じたキャンペーンや営業活動を行わなければ成果は見込めません。3C分析で競合や市場の動きを確認し、マーケティング戦略をアップデートし続けることで、成果に繋げることができます。
STP分析は、市場細分化(Segmentation)、市場の選定(Targeting)、自社立ち位置の明確化(Positioning)という3つの要素を分析するフレームワークです。事業を軌道に乗せるためには顧客となるターゲットの選定ももちろん大切ですが、市場選びや自社の立ち位置を明確にすることも重要です。
STP分析ではまず、市場の全体像を把握し「どこに勝機があるか」を明確にします。その中から自社が成果を出しやすいと考えられる狙うべき市場を決め、競合他社の位置関係や強み・弱みなどを分析し、差別化戦略を検討していきます。
スポーツドリンクブランドを例に挙げると、以下の通りになります。
このような分析結果を元に、自社の提供している商品や競合他社の商品を分析し、勝機のある市場を選びます。ライバルが少ない、かつ自社の商品がマッチする市場を選ぶことで競合優位性を勝ち取ることができます。
ABM戦略で成果を出すための重要なポイントとしては、以下の2つが挙げられます。
ABMを導入して成果を上げるためには、優良顧客選定後にすぐにアプローチをかけられる体制づくりと、詳細なデータ分析を行うための顧客データ基盤の整備が重要です。
考えられる施策としては、マーケティング部門がデータを抽出・分析した結果を営業部門がリアルタイムで確認できるツールを導入することが考えられます。営業部門とマーケティング部門が、相互にコミュニケーションを取りやすい環境を構築していきましょう。
また、自社の顧客データをクレンジング・名寄せし、古いデータや重複データを一掃することで、精度の高いデータ分析を行うことができます。データの分析精度を高めることで、より実態に即したABM施策を実行することが可能です。
参考記事:ABM成功のために解決すべき3つの課題とは?解決のカギとなるデータ活用も紹介▶︎
ABM実践のためには、ターゲット選定や部署間の連携を促進するためのデータ連携、運用整備、効果測定のための環境設定など、様々なポイントや注意点があります。それらを社内リソースだけで実現するには多大な労力を必要とします。
不足したデータに基づき「とりあえずABMっぽいものをやって」みてなんだかうまくいかないという結論に陥る可能性もあります。最適な施策を行えていないために、ABMの実践自体をあきらめてしまうという機会損失が発生しているのです。
そんな課題に関して、ユーソナーサービスを導入することで多くの問題が解決できるかもしれません。ユーソナーはABMの成功に不可欠なデータの問題を解決します。
ユーソナーは大企業から個人事業主といった広範囲の企業情報を保有し、さらに営業所や店舗など拠点単位で網羅した法人企業データベース「LBC」を展開しています。LBCを活用することで、企業単位だけでなく拠点単位で自社にとっての優先的なターゲットをリアルタイムに漏れなく抽出することが可能です。
ABMを行う上で、まずは企業情報が正規化されていることが必要不可欠です。
ユーソナーは、20年以上のご支援実績をもとに作成したマスタで高精度な名寄せを実現します。表記ゆれや社名変更、住所移転などあらゆる変更情報を素早く検知し、メンテナンスを行います。
連携するSFA上の情報も自動で更新されるため更新にかける社内リソースの削減が可能です。
ユーソナーは、各社に対して、様々な軸の企業属性を付与しています。業種や所在地、売上高など基本的な属性はもちろん、企業の特徴や興味・関心をまとめた定性的な属性「ストーリー」を構築しています。
このストーリーの活用により、ターゲットとなる企業をより多角的に分析することが可能です。
詳細についてはぜひこちらのページから、お気軽にお問い合わせください。
ABMは、特定の企業やキーパーソンをターゲットとして効果的なアプローチを行うことで、高い成果を得ることができるマーケティング手法です。ABMを導入することで、リードタイムの短縮、ROIの向上、顧客ロイヤルティの強化といった多くのメリットが期待できます。
しかし、ABMを実践するには、目的や戦略を明確にし、十分なデータの収集と分析を行うことが欠かせません。顧客データや市場の分析によって市場全体を可視化することで、より精度の高い戦略を立てることができます。
ABMの実践を通じて、企業はクライアントとより長期的な関係を構築することができます。ABMの導入を検討している方は、ぜひ本記事を参考に、自社にとって最適なABM戦略を実践していきましょう。
この記事を書いた人
ユーソナー編集部
MXグループ・編集長
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主にBtoB事業を営む企業様に向け、これからの業務のあり方を考える上で有用なデータ活用やデジタル技術に関する情報を発信しています。
ユーソナー株式会社では、BtoB企業の市場開拓におけるデータ活用の実態について、経営企画職の方500人を対象にアンケート調査を実施し、レポートにまとめました。 営業・マーケティング活動を強化・改善していくためのヒントやきっかけとしていただければ幸いです。
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