• AI SaaS
  • データ活用

【データ整備の本質 vol.4】AIエージェント時代のデータ整備実践:整備から活用へ繋ぐ「必要な処理」と「解決すべき課題」

更新日: 2026年10月13日

生成AIの活用は、人が質問しAIが答える「対話型」の段階から、AIが自ら情報を参照し、判断し、業務を実行する「AIエージェント」の段階へと移行しつつあります。営業リストの生成、顧客への一次対応、与信チェックの下調べといった業務を、AIエージェントが担う場面が増えています。

この変化は、データ整備の意味を根本から変えます。人が使うデータであれば、多少の表記ゆれや古い情報があっても、担当者が違和感に気付き補正することができました。しかし、AIエージェントは与えられたデータをそのまま判断の根拠とします。整備されていないデータは、AIエージェントによって誤った判断として組織に高速に展開されます。

本連載では、第1回でAI時代のデータ品質が経営課題であること、第2回で「AI-Readyデータ」の4要件、第3回で「継続的データ整備」という第3のアプローチを解説してきました。最終回となる本記事では、これらを実践に落とし込むために必要なデータ処理、データ整備によって解決できること、そして読者の皆さまが持ち帰ることができるチェックリストについて解説します。
※本記事は4回連載の最終回です

ー連載第3回の記事はこちらー
【データ整備の本質 vol.3】継続的データ整備:スポット型と入口統制に続く第3のアプローチ

目次

AIエージェントは「整備されていないデータ」のまま動き出す

多くの企業において、AIエージェントが参照することになるデータは、AIのために設計されたものではありません。営業部門のSFA(営業支援システム)、マーケティング部門のMA(マーケティングオートメーション)、管理部門の基幹システムは、それぞれの業務目的に合わせて別々に構築され、同じ取引先が異なる表記、異なる粒度で登録されています。

Salesforce社が2025年に18か国で実施した調査では、企業が平均897個のアプリケーションを利用している一方で、相互に接続されているのは29%にとどまると報告されています※1。また、正式なデータガバナンスの枠組みを確立している組織は43%にとどまるとされています。AIエージェントは、この分断された状態のデータをそのまま参照して動き出します。

さらに、AIエージェント自身が新たなデータを生成し、システムに書き戻す点にも注意が必要です。Gartner社は、検証されていないAI生成データの増加を背景に、2028年までに組織の50%がデータガバナンスにゼロトラストの姿勢を採用すると予測しています※2。同社は「組織はもはやデータを暗黙のうちに信頼したり、人が生成したものと仮定したりすることはできない」と指摘しています。

AIエージェント時代にデータを扱いやすくするために必要な作業は「揃える」「意味付ける」「保ち続ける」の3つに集約されます。

  • 揃える
    複数のシステムに散在する同一企業のデータを、共通のコードで紐付けて一元化する作業です。AIエージェントが参照する唯一の正であるSSOT(Single Source of Truth)を作ります。
  • 意味付ける
    企業の業種、規模、資本系列、取引ステータスといった文脈情報を付与し、AIが「どのような企業か」を解釈できる状態にする作業です。
  • 保ち続ける
    社名変更、移転、休廃業といった変化を継続的に検知・反映し、出所と更新履歴を記録する作業です。整備を工程ではなく状態として維持します。

AIエージェント時代に必要なデータ処理

上記の3つの作業を実践に落とし込むと、以下の5つの処理が必要になります。これらは、前回までにご紹介した「AI-Readyデータの4要件」と「継続的データ整備のプロセス」を、実務の処理単位に分解したものです。

①統合キーによる名寄せ・一元化
表記ゆれ、旧社名、事業所と本社の区別を吸収できる統合キーを設計し、全システムの取引先データを紐付けます。法人番号は有効な手がかりですが、事業所単位や海外拠点、法人格を持たない組織には付与されないため、より網羅的なコード体系との併用が現実的です。統合キーの設計品質が、以降のすべての処理の精度を決めます。

②文脈情報(属性)の付与
統合された企業データに、業種、従業員規模、売上規模、資本系列、拠点構造などの属性を付加します。Gartner社は2026年3月のデータ&アナリティクス・サミットにおいて、AIエージェントが信頼性をもって動作するには生データを超えたビジネス上の文脈が必要であると説明しました※3。その上で、文脈を「新たな重要インフラ」と位置付けています。社内に存在しない属性は、外部の企業情報データベースから補完します。

③鮮度の継続的な維持
外部の信頼できる企業情報を基準に、社内データとの差分を継続的に検知し、反映します。前回の記事で解説した「検知・照合・判定・反映」のプロセスを、人手ではなく仕組みとして運用します。反映の自動化と人の確認を、変化の種類によって使い分ける基準を定めることが重要です。

④出所と更新履歴の管理
データがどこから来て、誰が、いつ、何を根拠に更新したかを記録します。AIエージェントが生成・更新したデータには、その旨を識別できる情報を付与します。デジタル庁が2025年6月に公表した「データガバナンス・ガイドライン」でも、データの完全性・最新性の担保と、信頼できる出所であることの重要性が示されています※4。出所管理は、AIの判断を後から検証するための前提です。

⑤アクセス設計とガバナンスの明文化
どのAIエージェントが、どのデータを、どの目的で参照・更新できるかを定義します。データの責任者(データオーナー)、品質基準、例外の扱いを明文化し、AIの利用範囲が広がっても規律が維持される体制を作ります。整備の仕組みと同じく、ガバナンスも一度の策定で終わらせず、AIの活用範囲に応じて見直すことが求められます。

データ整備によってAI活用で解決できること

では、これらの処理を経て整備されたデータは、具体的にどのような課題を解決するのでしょうか。B2B企業における代表的な4つの場面をご紹介します。

  1. 営業のAIエージェントによる「誰に・いつ・何を」の提案
    統合と文脈付与が済んだ顧客マスターを参照することで、AIエージェントは「既存顧客と同じ資本系列にある未取引企業」や「業種と規模が優良顧客に近い企業」を抽出し、提案の優先順位を付けることが可能になります。データが分断された状態では、AIは営業部門の見ている範囲でしか判断できません。マーケティング部門の接点情報や管理部門の取引実績が同じコードで紐付いていることで、部門横断の文脈を踏まえた提案が実現します。鮮度が維持されていれば、休廃業した企業や移転前の住所が提案に混入することもなくなります。
  2. RAG(検索拡張生成)による社内ナレッジ回答の信頼性向上
    生成AIに社内資料を参照させるRAG(Retrieval-Augmented Generation)では、参照される資料が古い、あるいは同じ企業について矛盾する情報が複数ある場合に、誤った回答が生成されやすくなります。顧客マスターと資料が統合キーで紐付き、出所と更新日が管理されていれば、AIは最新かつ正の情報を優先して参照することが可能です。データ整備は、AIの精度をモデル側ではなく参照元側から高める手段と言えます。
  3. 与信・コンプライアンスチェックの継続的な自動化
    取引先の合併、代表者変更、休廃業といった変化を継続的に検知できる状態であれば、再チェックの必要な取引先をAIエージェントが自動で抽出し、担当者に確認を促すことができます。年に一度の棚卸しでは見逃していた変化を、発生した時点で把握することが可能です。出所と履歴が記録されていることで、監査や説明責任への対応も容易になります。
  4. 経営判断に用いる指標の一貫性確保
    顧客数、取引企業数、業種別売上といった経営指標は、部門ごとに顧客の定義や名寄せの基準が異なると、集計のたびに数字が食い違います。AIエージェントがダッシュボードやレポートを自動生成する場面では、この食い違いがそのまま経営会議に提示されるリスクがあります。SSOTとなる顧客マスターを全社で参照することで、AIが生成する指標の一貫性を担保することができます。

いずれの場面にも共通するのは、AIの精度を高める鍵がモデルの選定ではなく、参照するデータの「統合」「文脈」「鮮度」「出所」にあるという点です。

【ポイント整理】AI-Readyなデータ整備のチェックリスト

最後に、AIエージェント時代のデータ整備に着手する際、読者の皆さまが自社の状況を確認するためのチェックリストを整理します。「データの状態」と「体制・仕組み」の2つの軸で確認することを推奨します。

  • データの状態
    • AIが参照する顧客・取引先データが、どのシステムに存在するか棚卸しされているか
    • 複数システムの同一企業が、共通のコードで紐付けられているか
    • 業種、規模、資本系列などの文脈情報が付与されているか
    • 最終更新から1年以上経過したデータの割合を把握しているか
    • AIが生成・更新したデータを識別できるか
  • 体制・仕組み
    • データの責任者(データオーナー)と品質基準が明文化されているか
    • 外部の企業情報を基準に、変化を継続的に検知・反映する仕組みがあるか
    • 自動反映と人の確認を、変化の種類によって使い分ける基準があるか
    • AIエージェントがどのデータをどの目的で参照・更新できるか定義されているか
    • 整備の効果を、AI出力の精度や業務指標で測定する方法が決まっているか

上記のポイントを意識することで、AI活用の投資を「実験」で終わらせず、業務に組み込まれた成果へと繋げる基盤を築くことができます。

まとめ

本記事のポイントを3点にまとめます。①AIエージェントは整備されていないデータをそのまま判断根拠とするため整備の意味が根本から変わる、②必要な処理は統合・文脈付与・鮮度維持・出所管理・ガバナンスの5つに集約される、③データの状態と体制の2軸で現状を確認し継続的な整備を仕組みとして運用することが成果に繋がる、という点です。

本連載【データ整備の本質】では、4回にわたりAI時代のデータ品質を読み解いてきました。第1回で示したように、AI活用の成否は投入するデータの品質で決まります。第2回で定義した「AI-Readyデータ」の4要件、第3回で提示した「継続的データ整備」、そして本記事で整理した5つの処理は、いずれも同じ結論に行き着きます。データ整備の本質とは、データを一度きれいにすることではなく、AIが信頼して参照できる状態を保ち続けることです。データトランスフォーメーションなくしてデジタルトランスフォーメーションがなかったように、AI-Readyなデータなくして本当のAI活用はないと考えられます。

弊社の顧客データ統合ソリューション「ユーソナー」は、AIエージェント時代のデータ整備に必要な処理を一体で支援しております。「LBC」という独自のコード体系による顧客情報の管理に加え、日本最大級の企業情報データベースを搭載しており、業種や資本系列といった文脈情報の付与と、社名変更や休廃業などの変化の継続的な反映が可能です。ユーザーの興味関心や競合との接触状況を推察できるインテントデータもご提供しており、整備したデータをAIによる次のベストなアプローチの洞察へと繋げることができます。

詳細についてはぜひこちらのページから、お気軽にお問い合わせください。

前回までの記事

【データ整備の本質】は、全4回のシリーズ企画です。
前回までの記事は、こちらからご覧いただけます。

【データ整備の本質 vol.1】なぜ今AI時代のデータ品質なのか:AIが成果を生まない企業の「データ」という盲点
【データ整備の本質 vol.2】AI-Readyデータとは:AIが正しく理解できるデータ品質の4要件
【データ整備の本質 vol.3】継続的データ整備:スポット型と入口統制に続く第3のアプローチ


※1: Salesforce「State of Data and Analytics」に関する発表(2025年6月〜8月調査)
https://www.salesforce.com/news/stories/data-analytics-trends-2026/
※2: Gartner「Gartner Predicts by 2028, 50% of Organizations Will Adopt Zero-Trust Data Governance」(2026年1月21日)
https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2026-01-21-gartner-predicts-by-2028-50-percent-of-organizations-will-adopt-zero-trust-data-governance-as-unverified-ai-generated-data-grows
※3: Gartner Data & Analytics Summit 2026(2026年3月)の主要論点に関する解説
https://atlan.com/know/gartner/key-takeaways-from-gartner-da-summit-2026/
※4: デジタル庁「データガバナンス・ガイドライン」(2025年6月20日)
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/71bf19c2-f804-488e-ab32-e7a044dcac58/b1757d6f/20250620_news_data-governance-guideline_01.pdf

この記事を書いた人

uSonar

ユーソナー編集部

MXグループ・編集長

ユーソナー編集部です。
主にBtoB事業を営む企業様に向け、これからの業務のあり方を考える上で有用なデータ活用やデジタル技術に関する情報を発信しています。

ユーソナーは業種・業界問わず
様々な企業において活用いただいております。

  • Ministry of Economy, Trade and Industry.
  • Asahi
  • BIZ REACH
  • NITORI BUSINESS
  • FUSO
  • MIZUHO
  • PayPay
  • Ministry of Economy, Trade and Industry.
  • Asahi
  • BIZ REACH
  • NITORI BUSINESS
  • FUSO
  • MIZUHO
  • PayPay
  • RICOH
  • 弁護士ドットコム
  • りそな銀行
  • SAKURA internet
  • SATO
  • 株式会社そぞん情報システムズ
  • Suzuyo
  • RICOH
  • 弁護士ドットコム
  • りそな銀行
  • SAKURA internet
  • SATO
  • 株式会社そぞん情報システムズ
  • Suzuyo

ITreview Grid Award 2026 Fall
リーダー認定6部門

  • ITreview Grid Award 2026 Fall
  • 企業データベース
    ABMツール
    営業リスト作成ツール
    セールスイネーブルメントツール
    反社チェックツール
    名刺管理ソフト

ユーソナーなら、
貴社の課題も解決へ導きます!

導入事例やサンプルレポートを
ダウンロード

すべての『資料』を見る
導入事例やサンプルレポートをダウンロード

お急ぎの方はお電話にて03-5388-7000受付時間 10:00 〜 17:00(土日祝休)

データ活用による営業DXの決定版

サービス資料

5分で分かる ユーソナー

5分で分かるユーソナー

資料ダウンロード