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【データ整備の本質 vol.1】なぜ今AI時代のデータ品質なのか:AIが成果を生まない企業の「データ」という盲点

更新日: 2026年10月 7日

生成AI(Generative AI)やAIエージェントの普及により、多くの企業がAI活用への取り組みを加速させています。日本企業のうち何らかの業務で生成AIを活用している企業の割合は55.2%に達したと言われています(総務省「令和7年版 情報通信白書」より)。数年前には一部の先進企業の取り組みであったAI活用が、いまや多くのB2B企業にとって身近なテーマとなりました。

一方で、AIへの投資がビジネス成果に結びついている企業は限られているのが実情です。米国の調査機関からは「AIプロジェクトの大半が価値を生んでいない」という厳しい指摘も相次いでいます。その原因として、人材やツールに焦点が当たりがちですが、見落とされている要素があります。それが、AIに投入する「データ」の品質です。

本連載【データ整備の本質】では、全4回にわたりAI時代に求められるデータ品質を読み解き、データ整備の本質を考察します。第1回となる本記事では、AI活用の現在地、データ品質を軽視することで生じるリスク、先進企業の動き、そして最初の一歩について解説します。
※本記事は4回連載の第1回です

目次

AI活用を取り巻く現在地

AI活用を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しています。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2025」によると、生成AIの導入・試験・検討に前向きに取り組む企業は日本で約50%であり、米国の約80%、ドイツの約70%と比較すると差が開いている状況です※1。同時に、DX(デジタルトランスフォーメーション)で「成果が出ている」と回答した企業の割合は日本で約60%にとどまり、米国・ドイツの80%以上との開きも指摘されています。

こうした変化の背景として、以下の3点が挙げられます。

  • AIプロジェクトの失敗要因としての「データ」の顕在化
    Gartner社は2025年2月、「AI-Readyなデータ」に支えられていないAIプロジェクトの60%が2026年までに放棄されるという予測を発表しました※2。同社が2024年7月に実施した調査では、回答したデータ管理責任者1,203名のうち63%が、AI向けの適切なデータ管理プラクティスを持っていない、あるいは持っているか確信がないと答えたとされています。AIの成否がモデルではなくデータで決まる、という認識が広がりつつあります。
  • 「実験」から「本番」への移行の壁
    MIT(マサチューセッツ工科大学)のプロジェクトNANDAは、2025年7月にレポートを公表しました。そこでは、企業が生成AIに300億〜400億ドルを投じているにもかかわらず、95%の組織が測定可能な成果を得られていないと報告されています※3。多くの企業が生成AIを試用する段階までは到達しているものの、業務に組み込み、継続的に価値を生む段階へ移行できていないことが分かります。
  • AIが参照するデータへの信頼低下
    Salesforce社が2025年6月〜8月に18か国のデータ・分析責任者3,800名を対象に実施した調査では、84%が「AIの目標を達成するにはデータ戦略の全面的な見直しが必要」と回答しました※4。同調査では、組織のデータの26%が信頼できないと推計され、AIを本番運用している責任者の89%が不正確または誤解を招くAI出力を経験したとされています。

これらの変化が重なることで、データ品質は情報システム部門だけの技術的課題から、AI投資の成否を左右する経営課題へと変わりつつあります。

データ品質を後回しにすることで生じるリスク・機会損失

データ品質への取り組みを先送りしたままAI活用を進めることで、企業は以下のようなリスクや機会損失に直面すると考えられます。

  • AI投資の回収不能
    精度の低いデータで学習や推論を行ったAIは、業務で使える水準の出力を安定して返すことができません。前述のSalesforce社の調査では、データ・分析責任者の55%が、品質の低いデータでモデルを訓練したことで多大なリソースを浪費したと回答しています※4。ツールやモデルへの投資が大きいほど、データ不備による損失も大きくなります。
  • 誤った意思決定の高速化
    AIは判断の速度を高める技術ですが、参照するデータが誤っていれば、誤った判断を高速に量産することに繋がります。例えば、社名変更や移転が反映されていない顧客データを基にAIがターゲットリストを生成すれば、存在しない企業や取引を終えた企業への営業活動が組織的に発生します。人が介在していた時代には気付けた違和感が、自動化によって見過ごされる可能性があります。
  • 部門間サイロによる文脈の欠落
    Salesforce社の調査では、企業が平均897個のアプリケーションを利用している一方で、相互に接続されているのは29%にとどまると報告されています※4。営業支援システム(SFA)、マーケティングオートメーション(MA)、基幹システム(ERP)に散在したデータは、それぞれ粒度や表記が異なります。AIが横断的に参照できない状態では、顧客の全体像を踏まえた提案や予測は困難です。
  • AI生成データの混入による品質劣化
    AIが生成した未検証の情報が顧客データベースやナレッジベースに書き戻され、それを再びAIが参照する循環が生じると、データが現実から徐々に乖離していくリスクがあると指摘されています。人手による入力ミスとは異なり、AI生成データは体裁が整っているため誤りに気付きにくいという特徴があります。データの出所を確認する仕組みがないまま自動化を進めることは、品質劣化を加速させる要因になり得ます。

これらのリスクは短期的には顕在化しにくいものの、AI活用の範囲が広がるほど累積し、中期的には企業の収益構造や顧客との信頼関係に影響を及ぼす可能性があると言われています。

先進企業はどう動いているか

AI活用で成果を上げている企業では、以下のような動きが観察されています。実名は避け、取り組みの内容を抽象化した形でご紹介します。

  • データ基盤への投資比率の引き上げ
    Gartner社は2025年11月〜12月に、データ・分析およびAIの責任者353名を対象に調査を行いました。その結果、AIの取り組みで成功している組織は、成果の乏しい組織と比較して、売上高に対するデータ・分析基盤への投資比率が最大4倍に達すると報告されています※5。また、AI-Readyなデータ・分析能力の成熟度が最も高い組織は、売上成長やコスト最適化といった事業成果が最大65%大きいとされています。成功企業はモデルよりも先に、データの整備と管理に投資しているという傾向が読み取れます。
  • データ責任者の設置と経営アジェンダ化
    IPAの調査によると、CDO(最高データ責任者)が在籍する企業の割合は日本で11.7%であり、米国の50.5%、ドイツの42.6%と比較して大きな差があります※1。先進企業では、データの品質や利活用に責任を持つ役割を経営層に置き、部門横断でデータ整備を進める体制を構築しています。データ整備が現場の善意に委ねられる状態から、経営の意思決定事項へと引き上げられている点が特徴です。
  • 顧客マスターを軸とした統合の先行
    AI活用に先立ち、顧客・取引先データの名寄せと統合を優先的に進める企業が増えています。営業、マーケティング、カスタマーサクセスの各システムに散在した企業情報を、共通のコードで紐付けます。SSOT(Single Source of Truth)となるマスターデータを整備することで、AIが参照する情報の一貫性を担保するという考え方です。データを「集める」のではなく「揃える」ことに先に取り組む点が、成果を上げる企業に共通しています。

これらの取り組みに共通するのは、「AI活用の成否はデータの品質で決まり、データ品質は経営課題である」という認識です。

まず何から始めるか

AI時代のデータ品質への取り組みは、大規模な投資から始める必要はありません。以下のようなスモールスタートが有効と考えられます。

  • AIが参照するデータの棚卸し
    自社で検討しているAIのユースケースを1つ選び、そのAIがどのシステムのどのデータを参照するのかを書き出します。顧客データ、商談データ、問い合わせ履歴など、参照元が複数の部門にまたがることが多くの企業で確認できます。参照元を可視化するだけでも、表記ゆれや重複といった品質課題の所在が明らかになります。
  • 品質課題の定量化
    棚卸しした対象について、重複率、必須項目の欠損率、最終更新からの経過期間などを簡易的に測定します。厳密な指標でなくとも、「顧客マスターの何割が1年以上更新されていないか」といった数字が、社内の合意形成において説得力を持ちます。
  • 1つのユースケースでの小さな検証
    整備前のデータと整備後のデータで同じAIのタスクを実行し、出力の違いを比較します。ターゲットリストの精度やレポートの正確さなど、業務担当者が判断できる基準で評価することが重要です。短期間で差が可視化されれば、社内の巻き込みが加速します。
  • 継続的な整備体制の設計
    検証の結果を基に、データの責任者、更新頻度、外部データの活用方針を定めます。企業データは日々変化するため、一度の整備で終わらせず、継続的にメンテナンスする仕組みを前提とした計画を立てることが求められます。

重要なのは「完璧なデータを待たないこと」です。AI時代のデータ整備は走りながら改善する領域であり、着手の遅れがそのままAI活用の遅れに繋がります。

おわりに

本記事のポイントを3点にまとめます。①AI活用の成否はモデルではなく投入するデータの品質で決まる、②データ品質を後回しにするとAI投資の回収不能や誤った意思決定の高速化を招く、③参照データの棚卸しと小さな検証から始め継続的な整備体制へ繋げる、という点です。

AI時代のデータ品質は、単なる技術的なテーマではなく、B2B企業のAI投資の成否を左右する経営課題です。DXが語られる際にはDXの前提となるデータ整備が盲点となっていましたが、AI時代においてもその構図は変わっていません。むしろ、AIが判断と実行の速度を高めるからこそ、データの正確さと鮮度がこれまで以上に重要になっていると考えられます。次回は、AI時代に求められるデータ品質の要件を「AI-Readyデータ」という概念から具体的に読み解きます。

弊社の顧客データ統合ソリューション「ユーソナー」は、AI活用の前提となる顧客データの整備を支援しております。「LBC」という独自のコード体系による顧客情報の管理に加え、独自に収集した企業データを活用頂くことで、鮮度の高い外部情報を継続的に取得することが可能です。AI活用の初期段階から、信頼できるデータ基盤の構築をスピーディーに進めて頂けるよう支援いたします。

詳細についてはぜひこちらのページから、お気軽にお問い合わせください。

次回記事

【データ整備の本質】は、全4回のシリーズ企画です。
次回記事は、こちらからご覧いただけます。

【データ整備の本質 vol.2】AI-Readyデータとは:AIが正しく理解できるデータ品質の4要件


※1: IPA「DX動向2025」(2025年2月〜3月調査)
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/tbl5kb0000001mn2-att/dx-trend-2025.pdf
※2: Gartner「Lack of AI-Ready Data Puts AI Projects at Risk」(2025年2月26日)
https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2025-02-26-lack-of-ai-ready-data-puts-ai-projects-at-risk
※3: MIT Project NANDA「The GenAI Divide」に関する報道(2025年8月)
https://virtualizationreview.com/articles/2025/08/19/mit-report-finds-most-ai-business-investments-fail-reveals-genai-divide.aspx
※4: Salesforce「State of Data and Analytics」に関する発表(2025年調査)
https://www.salesforce.com/news/stories/data-analytics-trends-2026/
※5: Gartner「Organizations with Successful AI Initiatives Invest Up to Four Times More in Data and Analytics Foundations」(2026年4月16日)
https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2026-04-16-gartner-says-organizations-with-successful-ai-initiatives-invest-up-to-four-times-more-in-data-and-analytics-foundations

この記事を書いた人

uSonar

ユーソナー編集部

MXグループ・編集長

ユーソナー編集部です。
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