- データ活用
B2Bデータ活用に欠かせない「データ品質」の向上とは
更新日: 2021年4月15日
企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める中で、単にデータを整備するだけでは不十分です。特に、蓄積されて死蔵されているデータ(「ダークデータ」)を放置しておくと、DXの阻害要因となってしまいます。
本記事では、データの品質劣化を回避し、活用できる状態に保つためのROD(Return On Data)の考え方とその具体的な事例を紹介します。ぜひ最後までお読みください。 ※本記事は4回連載の第3回です
目次
企業が構築するデータは大きく以下の3種類に分けられます。
クリーンデータ:有効と判断され、ビジネスに活用できるデータ
ダークデータ:一時的には有用であったが、価値を認識されずに死蔵されているデータ
ROTデータ:古くなり、重複している、あるいは無駄なデータ(Redundant、Obsolete、Trivial)
2020年7月4日付けの日本経済新聞の記事によると、企業が保有するデータの平均57%は「ダークデータ」であるとされています。加えて、ROTデータも企業内に多く存在します。これらを放置すると、ストレージのコストが増加し、データ漏洩によるブランド力の低下リスクなど、さまざまなマイナス要因が生じます。
DX実現の前段階としてデジタライゼーションが加速し、企業は急速にデータを作成・保存しています。特にBtoBでは社名変更や住所移転、倒産、統廃合などの事情でデータの正確性や鮮度が失われやすく、ダークデータやROTデータの増加につながり、無駄なコストがかさんでしまいます。
多くの企業は、ダークデータを生まないためのRODを行う基盤構築に多額のコストがかかると思い込んでいます。確かにデータを維持するための人件費や処理コストは増加していますが、一方で、IT技術の進化によりデータ保持コスト自体は低下してきています。
ユーソナーでは日々データメンテナンスを実施しています。2019年1年間だけでも、事業所を含めた社名変更は91,104件、住所変更は159,581件にものぼりました。社名変更や移転、倒産などは日常的に発生しており、これらを手作業で対応するのは非現実的です。不定期なスポットでのデータメンテナンスも有効ですが、データは絶えず変化するため、リアルタイムで自動的にメンテナンスを行う基盤を構築するほうが、長期的に見てコスト効率は高まります。
DX実現のためには、整備されたデータをリアルタイムに活用することが重要です。RODを行う基盤を構築し、ダークデータを生まないようにすることは、業務効率を向上させるだけでなく、企業全体の競争力を高める手段となります。
ある大手SIer企業は、大企業グループのシステムインテグレーターであり、コンサルティングから運用までをワンストップで提供しています。同企業は、商談に繋がるビジネス機会を創出するためのインサイドセールスに注力しており、精緻なデータを活用して見込み顧客数や案件創出数を分析する必要がありました。しかし、営業担当者からの登録や変更依頼を手動で処理していたため、タイムラグが生じていました。
そこで、データ統合ツールを導入し、eセールスマネージャー(SFA)と連携することで、社名変更や住所移転などの自動メンテナンスを実現しました。この結果、データの鮮度維持にかかっていたコストや工数を削減し、インサイドセールスに注力できる環境が整いました。また、リアルタイムで正確なデータをもとに指標を算出することが可能となり、プロセスマネジメントの最適化も達成されました。
ある大手受託開発ソフトウェア企業では、さまざまな部署やキャンペーンごとにデータが散在し、営業活動の連携に支障をきたしていました。手動でデータ整備を行っていたため、業務負荷が大きく、ダークデータが生まれやすい状況でした。これにより、ビジネス展開のスピードが低下していたのです。
データ統合ツールを導入することで、各部署に散在していたデータを自動的に統合し、マスターデータを構築。さらにデータメンテナンスの自動化も実現しました。この結果、データ登録や整備にかかっていた年間26,200時間の業務時間が、51%削減され、13,300時間の業務削減につながりました。こうして得られた時間は、新たなビジネスモデルやサービスの開発に活用され、業務の効率化と革新を両立させています。
データメンテナンスを自動化し、ダークデータやROTデータをRODすることは、DXをスムーズに推進するうえで非常に重要です。しかし、DXを実現するためには、単にデータを整備するだけでなく、そのデータを積極的に活用し、価値を引き出すことが求められます。
BtoBのデジタルマーケティングにおいて、購買プロセスの大部分が営業担当者が訪問する前に完了していることが、ガートナー社の調査でも明らかになっています。企業のWEBサイトやオンラインチャネルを通じて、潜在的なニーズをキャッチし、見込み顧客の行動を分析することで、より精密なマーケティング施策を打つことができます。これにはオンライン上のデータをリアルタイムで統合し、分析できる環境が必要です。
ROD基盤を強化することで、オンラインデータを活用したターゲティングや顧客の購買意欲の予測が可能となり、マーケティングから営業まで一貫した顧客体験を提供できます。さらに、オンラインで取得したデータをオフラインの顧客データと連携することで、複合的な分析やより高度な顧客インサイトの獲得が可能となります。これにより、企業は顧客ごとに最適なアプローチを設計し、効率的な営業戦略を実施できるのです。
データ基盤の活用によって、企業は単なる情報の保持から脱却し、リアルタイムでのデータ活用によって競争力を高め、DX推進における持続可能な成長を実現できるでしょう。
「ダークデータ」やROTデータを放置せず、適切にメンテナンスし、ROD(Return On Data)を実践することは、企業のDX推進において極めて重要です。企業はデータ基盤を整備し、日々のデータメンテナンスを自動化することで、コスト削減と業務効率の向上を同時に達成できます。
また、整備されたデータは、マーケティングや営業活動において新たな価値を生み出し、競争優位性を高める要因となります。データ活用を戦略的に行うことで、DXの真の成功を手にすることができるのです。
【DXの本質】は、全4回のシリーズ企画です。
次回記事は、こちらからご覧いただけます。
この記事を書いた人
ユーソナー編集部
MXグループ・編集長
ユーソナー編集部です。
主にBtoB事業を営む企業様に向け、これからの業務のあり方を考える上で有用なデータ活用やデジタル技術に関する情報を発信しています。
ユーソナーは業種・業界問わず
様々な企業において活用いただいております。
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