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基幹システム刷新はなぜ必要なのか?データを軸にしたシステム移行を4stepで解説
更新日: 2024年7月 4日
2024年現在、基幹システムの刷新はさまざまな企業にとって喫緊の課題となっています。しかし、その取り組みは容易ではなく、失敗するケースも少なくありません。
多くの場合、データの正規化や整備が不十分なまま進められることが原因で、結果として期待した効果が得られず、多大な投資が無駄になるリスクがあります。
本記事では、基幹システム刷新が失敗する主な理由を解説するとともに、成功の鍵となるデータの正規化の重要性について詳しく説明します。
目次
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近年、多くの企業が基幹システムの刷新を迫られています。
急速に変化するビジネス環境において、企業はデジタル技術を活用して業務プロセスを改革し、競争力を維持・向上させる必要があります。
しかし、多くの企業の基幹システムは、このような変化に対応できるだけの柔軟性を持ち合わせていません。
長年使用してきた基幹システムは、度重なる改修や機能追加により複雑化し、維持管理のコストが増大しています。
システムの構造を理解している技術者の退職や不足により、適切な保守が困難になっているケースも多々あります。
これらの問題は、いわゆる「2025年の壁」として知られています。
経済産業省が警鐘を鳴らしているこの問題は、2025年以降、老朽化したシステムの保守や運用が限界を迎え、最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるというものです。
基幹システム刷新はなぜ必要なのか?データを軸にしたシステム移行を4stepで解説▶︎
では、基幹システムの刷新が失敗する理由にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的なものとしては、以下が挙げられます。
それぞれ個別に解説します。
基幹システムの刷新プロジェクトを始める際、「老朽化したから」「保守が困難だから」といった漠然とした理由で着手してしまうケースが少なくありません。
しかし、明確な目的や期待する効果が設定されていないと、プロジェクトの方向性が定まらず、場当たり的な対応になってしまいます。
また、投資対効果の評価が難しくなり、経営層の理解と支援を得られにくくなるでしょう。
加えて、プロジェクトの成功基準が不明確となり、適切な進捗管理ができなくなるリスクもあります。
刷新プロジェクトを成功に導くためには、「なぜ刷新するのか」「何を実現したいのか」を明確にし、具体的な数値目標を設定することが求められます。
基幹システムの刷新は大規模かつ複雑なプロジェクトであるため、外部のITベンダーに依頼することが一般的です。
しかし、自社の業務や課題を十分に理解していないベンダーが主導することで、実際の業務に適合しないシステムが構築されてしまう可能性があります。
また、ベンダーの都合や技術的な制約が優先され、「本来実現したかった機能や効果が後回しにされる」ケースも考えられます。
成功する刷新プロジェクトでは、自社が主体的にプロジェクトをコントロールし、ベンダーと協業する体制が不可欠です。
要件定義や進捗管理、テストなどの重要なフェーズには必ず自社メンバーが深く関与することが求められます。
基幹システムの刷新では、経営層、現場部門、IT部門など、多様なステークホルダーが関わります。
しかし、各部門の立場や視点が異なるため、しばしば認識のずれが生じます。
例えば、現場部門では、日々のデータ入力が煩雑で負担に感じているケースが多く、また自部門のインターフェースしか接しないため、全社的なデータ統合の重要性を実感しにくい状況にあります。
IT部門は、システムやツールが部門ごとにバラバラで、全体的なメンテナンスや統合が困難な状況に直面しているケースもあるでしょう。
一方、経営層は部門横断的に統合されたデータを見たいと考えていますが、現状では困難な状況です。
このように各部門の立場や視点が異なるため、基幹システム刷新の目的や方向性が一致しにくくなります。
結果として、各部門の都合に合わせた部分最適化が進み、全体最適化が図れないまま刷新プロジェクトが進行し、失敗に終わってしまうのです。
DXを推進し、真に効果的な基幹システムの刷新を実現するためには、データの正規化が不可欠です。
ここからは、なぜ基幹システムの刷新においてデータの正規化が必要なのかについてみていきましょう。
基幹システムは、企業の中核を成す様々な業務データを扱います。販売管理、在庫管理、財務会計、人事給与など、多岐にわたる部門のデータが日々蓄積されていくものです。
しかし、これらのデータは必ずしも整理された状態で保管されているわけではありません。
各部署のデータ、各業務システムのデータ、新旧のデータなどが混在しないよう、データを適切に名寄せする必要があります。
また、時間の経過とともに、データは劣化します。古くなったデータのメンテナンスには多大なコストと工数がかかります。
にもかかわらず、多くの企業ではデータ整備の重要性が十分に認識されておらず、システムだけを新しくしたため期待した効果が得られないというケースが多々見られます。
DXの進展に伴い、顧客管理、マーケティング、調達など、必要なデータは増加の一途をたどっています。
これらのデータを適切に統合・名寄せし、継続的にメンテナンスを行わなければ、DX推進も「絵に描いた餅」に終わってしまう可能性があります。
したがって、基幹システムの刷新には、将来を見据えたデータ整備が不可欠なのです。
【5分でわかる】データクレンジングとは?目的や具体例もわかりやすく解説!▶︎
データの正規化により部門間のデータ連携が円滑になることで、業務の効率化が図れます。
正規化されたデータは、異なる部門間でも容易に共有・活用できますので、重複作業の削減や情報の一元管理が可能になるためです。
データの重複や不整合が解消されることで、データの品質が向上します。これにより、誤ったデータに基づいて判断するリスクが低減され、より信頼性の高い意思決定が可能になるでしょう。
結果的に、経営層から現場まで組織全体の目線合わせを行いやすくなります。
加えて、正規化されたデータは活用の幅が広がり、新たな価値創出や問題解決につながる可能性があります。
例えば、AIや機械学習などの先進的な技術を活用する際に、より精緻なデータ分析や予測を行えます。
部門ごとにデータがサイロ化している状態では、全社最適な意思決定を行うことが困難ですが、データを一元管理することで、全社的に効率性と競争力を高められます。
では、具体的にどのようなデータを統合すべきなのでしょうか。
以下に、基幹システムの刷新で正規化することになる主要なデータについて紹介します。
顧客データは、企業と顧客との関係を管理するための重要な情報です。
これらのデータを正規化することで、顧客の行動や嗜好をより深く理解し、効果的なマーケティング戦略の立案や顧客サービスの向上につなげられます。
顧客セグメンテーションの精度を高め、個々の顧客に合わせたパーソナライズされたアプローチを可能にするでしょう。
<顧客データの例>
商品データは、企業の提供する製品やサービスに関する情報を管理するために不可欠です。
正規化により、在庫管理の効率化、価格戦略の最適化、新商品開発の促進などが可能になります。
また、顧客データと組み合わせることで、クロスセルやアップセルの機会を特定し、売上の向上にも貢献します。
<商品データの例>
取引データは、企業の日々の商取引に関する情報のことです。
これらのデータを正規化すれば、キャッシュフローの管理や予測の精度が向上し、財務の健全性を維持するのに役立ちます。
<取引データの例>
財務データは、企業の経済的状況を把握し、戦略的な意思決定を行うための基礎となる情報です。
リアルタイムでの経営状況の把握や、より精緻な財務分析のためには、財務データの整備が求められます。
正規化により、予算管理の高度化や投資判断の精度向上にも貢献し、企業の財務パフォーマンスの最適化に繋がるでしょう。
<財務データの例>
基幹システムの刷新は長期に及ぶことが通例であるため、あらかじめ工数を把握しておくことが大切です。
では、どれほどの期間が必要なのでしょうか。
当社では、基幹システムのデータ正規化にかかる工数を、以下のようにシミュレーションしてみました。
<前提条件(※ユーソナー調べ)>
<シミュレーション>
つまり、1人が8時間/日で作業した場合、約416日(1年以上)かかる計算になります。
ただし、この工数は単純な機械的作業だけでなく、以下のような作業も含まれます。
実際にはこの作業には高度な業務知識とデータ分析スキルが必要となるため、さらに多くの時間と労力が必要になる可能性があるでしょう。
それと同時に、このシミュレーションからはデータ整備にかかる比重が大きいこともわかります。
基幹システムの刷新において、データの正規化は重要ですが、多くの企業にとって大きな課題となっています。
ユーソナーは、国内最大級の820万件の企業データベースを保有しており、これを「辞書」として活用することで、自社の基幹システムのデータを自動的に名寄せ・メンテナンスすることが可能です。
これにより、データ整備の工数を大幅に削減し、常に最新で正確なデータを維持できます。
さらに、ユーソナーのソリューションは現場の業務オペレーションを変更せずに導入できるため、業務への影響を最小限に抑えながらデータ品質の向上を図れます。
基幹システムの刷新は、企業のDX推進において重要な取り組みですが、その成功には多くの課題があります。
特に重要なのがデータの正規化です。
顧客データ、商品データ、取引データ、財務データなどの主要データを適切に整備することで、業務効率の向上や意思決定の質の改善が期待できます。
ただし、データ正規化には膨大な工数がかかるため、外部専門家やシステムも活用する必要があります。
それにより、自動データ整備や段階的な導入により、効率的にデータ品質を向上させることが可能です。
基幹システム刷新の成功は、単なるシステム更新ではなく、データ整備とその活用にあることを認識し、戦略的に取り組みましょう。
この記事を書いた人
ユーソナー編集部
MXグループ・編集長
ユーソナー編集部です。
主にBtoB事業を営む企業様に向け、これからの業務のあり方を考える上で有用なデータ活用やデジタル技術に関する情報を発信しています。
ユーソナーは業種・業界問わず
様々な企業において活用いただいております。
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