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ABMの進化系と言われる「BGM」とは?

更新日: 2024年6月27日

ABM(アカウントベースドマーケティング)では企業単位のターゲットを選定し、優先的に対応するターゲット企業を絞り込むことが重要視されています。これまでも、ABMは企業活動の効率化に一定の効果があると言われてきましたが、さらに効率的な企業活動を推進する上で、近年「BGM(バイインググループマーケティング)」という考え方が注目されています。

この記事ではより包括的で効果的な成果を上げることが期待されているBGMがどのようにして生まれたか、その特徴と利点やABMとの違いに触れながら解説します。

目次

ABMがもたらした変革とその限界

ABMでは見込み度や付加価値の高いとされるアカウントを「攻めるべき重点顧客」と定義することで、従来のマーケティング手法よりも精度の高いターゲティングとパーソナライズを実現することが可能です。具体的には、以下のような変革がB2Bマーケティングにもたらされました。

  • より効果的なターゲティング
  • ABMは重要な顧客や見込み客に焦点を当てるため、自社内のリソースを最適化し精度の高いコミュニケーションプランの立案を可能とします。これにより、企業活動における費用対効果が向上し、成果が改善されます。

  • パーソナライズされたアプローチ
  • ABMは個々の顧客のニーズや課題に合わせたパーソナライズされたメッセージやコンテンツを提供します。ターゲティングされていない企業群に対して画一的なアプローチを行う旧来の手法と違い、顧客の関心や要求に応じたアプローチによる関係構築は顧客満足度の向上や収益の持続的な成長につながります。

  • 営業とマーケティングの連携強化
  • ABMは営業とマーケティングの連携を強化し、共通の目標に向けた取り組みを促進します。両者が連携して顧客戦略を調整することで、顧客へのアプローチがより効果的になります。

    これらの要素が組み合わさり、ABMはB2Bマーケティングにおいて、より効果的で効率的な顧客獲得と関係構築を実現する手段として確立されました。

    ただしABMにも以下のような限界があり、これまでもさまざまな有識者が指摘をしてきました。

    • リソースの限定性
    • ABMは重点顧客や優先度の高い見込み客を選択的に対象とするため、リソースが限られている場合には、他の顧客セグメントへのアプローチが犠牲になる可能性があります。

    • スケーラビリティの課題
    • ABMは顧客に対するパーソナライズされたアプローチを重視するため、大規模なキャンペーンの展開には向いていません。そのため、顧客の規模を必要とするビジネスにおいては課題が生じることがあります。

    • データの質と可用性
    • ABMの成功には、顧客に関する詳細なデータが必要ですが、そのデータの質や可用性には課題があります。これは企業データベースを活用することで解決できる課題ですが、小規模な業界や新興企業においては、自前でデータを整える必要に迫られる場合があります。

      このような指摘がされる一方で、ABMが顧客との関係構築や顧客満足度の向上に効果的であることは間違いないとされており、B2Bマーケティングにおいて重要な戦略のひとつとされています。

      BGM(バイインググループマーケティング)とは

      ABMをさらに発展させつつ、これまで指摘されていたような限界を超えるための手法として、BGMが提唱され始めました。

      バイインググループマーケティングとはその名の通り、複数の意思決定者や関係者に焦点を当てたB2Bマーケティング手法であり、グループ内での意思決定を促進しながら顧客との関係を構築することが重要とされています。潜在的な買い手と対話するための実践的かつ戦術的なアプローチをとることができる、最新のマーケティング・フレームワークとして注目を集めています。

      BGMはABMがこれまで評価されてきた営業チームとマーケティングチームの円滑な連携を継続しつつ、購買ジャーニー全体を通して見込み客のあらゆる担当者により良い体験を提供することで、より広範な影響を与え、自社の企業活動の効率化と収益性や成果の最大化に影響を与えます。

      ABMとの違いという視点でBGMを評価すると、最大のポイントはターゲットとするオーディエンスの数が異なるということです。

      ABMでは対象となる業種や職種をさまざまなデータを用いて絞り込み、特定の企業または部門がターゲットとなるのに対し、BGMでは購買や意思決定に関わる全てのグループのメンバーに焦点を当てることで、より顧客ペルソナを明確にしつつも広範囲に影響を与えることを可能とします。個々の顧客ペルソナはより絞り込まれるため、BGMはパーソナライズされたアプローチの効果を高めるとも言われています。

      また、顧客獲得プロセスにも異なる点があります。ABMは、マーケティングと営業チームが協力して特定の企業をターゲットにする戦略的アプローチです。個々のターゲット企業が抱える潜在ニーズや特性に合わせて、自社の活動をカスタマイズします。BGMは、組織内の複数のステークホルダーやバイインググループ全体の協力関係と意思決定プロセスを理解することに焦点を当てた、細やかなアプローチが重視されます。

      このように、ABMとBGMでは対象オーディエンスの数や顧客との合意形成の作り方に大きな違いが見られます。

      BGMがもたらすメリット

      BGMがもたらす変化を要約すると以下になります。

      • 企業活動プロセスの変化
      • 近年のB2Bの購買プロセスはグループやチームで購買意思を決定することが主流になっています。BGMでは顧客全体の購買意欲を高めるために、グループやチーム毎に存在する複数の決定者や影響者から支持を得るためのアプローチを行います。

      • 顧客エンゲージメントの重要度の変化
      • BGMでは顧客が購買プロセスの中で内部で情報を共有し合います。複数の関係者のニーズや課題が相互に作用するため、より細やかな顧客エンゲージメントが求められます。

        これらの変化がもたらされることにより、顧客の課題に自社のソリューションをフィットさせるための有益かつ具体的な情報を得ることができるというのが、BGMの主な利点です。
        BGMのもうひとつの利点は、アカウント全体において幅広い繋がりを形成できることにあります。これまでは1人の支持者が担当を離れた場合にビジネスを失うリスクがありましたが、主要な意思決定者たちとのエンゲージメントを確保することで、顧客全体との継続的な関係維持を容易にし、収益性を確保することにも良い影響をもたらします。

        他にもBGMを実践するメリットとして、以下のような内容が挙げられます。

        • セールスポイントの多角化
        • 画一的なメッセージに自社の強みを寄せる必要はなく、顧客のさまざまな組織における多様なニーズや視点に対応した活動を行うことができます。

        • 意思決定スピードの向上
        • 複数の決定者や影響者に対して情報や価値提案を提供することで、顧客内の合意形成の方向性をより細やかに主導していくことが可能です。

        • これまでにない信頼関係の確立
        • 複数の関係者と接点を持ち個々の期待やニーズを集約して満たすといった活動を通じて、ある種のリーダーシップを発揮することになり、顧客との信頼関係が深まります。

          総括するとBGMは、収益成長と顧客満足を促進しつつ、より細やかな粒度でパーソナライズされたマーケティング戦略を構築する手法として、これまでにない効果をもたらすことが可能です。

          BGMの代表的な手法

          BGMを効果的に実施するには、顧客内の個々のグループやチームが抱える課題とビジネス要件を理解し、購買ジャーニーの段階に沿った関連性の高い情報を提供することが重要です。

          以下がBGMを実現する上で一般的に進行されるステップと言われています。

          • ターゲットグループの特定
          • 業界・地域・規模といった特徴を調査し、自社の製品やサービスに関心のある企業群を見つけ、関係しうるグループやチームを特定します。

          • 購買グループとの関係構築
          • ターゲット企業の購買グループに属するリーダーやメンバーに接触します。例えばイベントへの参加やネットワーキングなどで購買グループ内のメンバーにアプローチし、自社の製品やサービスを紹介します。

          • 顧客視点での条件提示
          • 個別のグループやチームごとのニーズを踏まえた特別な購買条件やインセンティブを提供することで、自社の製品やサービスの購買を促しやすい状況を作ります。

          • 付加価値の提供
          • 例えば市況に関するリサーチ結果の共有や関連性の高いホワイトペーパーを提供することで、購買グループ内のメンバーに合わせた価値を提供し、自社に対する信頼を獲得します。
            グループやチームごとに必要となるトレーニングやサポートを提案に含めることも重要です。

          • 継続的なコミュニケーション
          • 自社の製品やサービスの利用を開始した後も、顧客の購買グループ内のメンバーと定期的にコミュニケーションをとり、優れたカスタマーサービスや継続的なサポートを提供することで、個別のグループやチーム内でのニーズを理解し続け、新たな提案を実施することができます。

            BGMを効果的に実施するためには、企業はまずターゲットとするオーディエンスに対するより深い理解が必要となります。そのためには、より具体的なデータを自社内で共有し、綿密なパイプライン計画を立てる必要があります。

            そのためには、自社の販売プロセスのフェーズごとにBGMを導入するという考え方があります。

            • 販売プロセスの初期フェーズ(情報収集)
            • 認知度を高め、ターゲットアカウントのニーズを理解することに重点を置きます。
              例えばソーシャルメディアを活用した広告や潜在顧客を惹きつけるランディングページを使用することが挙げられます。

            • 販売プロセスの中盤フェーズ(比較検討・ショートリスティング前)
            • 購買グループを効果的に関与させるために必要な情報交換を行います。競合と比較して自社の商談を有利に進めるために必要な情報を収集し、購買グループ内のメンバーが必要とする情報を提供します。

            • 販売プロセスの終盤フェーズ(ROI算定、顧客内上申準備)
            • 購買グループ内のメンバーに対して、グループやチームごとのペインポイントに対応することができるということを強調し、説得力のあるコンテンツを提示することで成約につながる会話を進めていきます。

              戦略的なプランニングだけでなく、現場で実践するイメージを持つことができるレベルでマーケティングとセールスの連携プランを策定することは、BGMの成功率を高め、顧客獲得の効率を高めることにつながります。

              おわりに

              Forrester Buying Groups Manifestoの冒頭には、「B2Bバイヤーは購買グループである」という記載があります。これは、今日のビジネス環境の進化に伴って定着し始めた考え方です。

              また、ガートナーのレポートによると、B2Bの平均的な購買グループは5人から11人で構成されており、購買の66%は6人以上が関与しているとされています。

              BGMを実現する上でマーケティングやセールスは、個々のバイヤーではなく購買グループ全体のニーズを知る必要があります。リードに焦点を当てすぎたマーケティング戦略を策定すると、その後の販売プロセスに関与する購買グループ内のメンバーから発信されるニーズを検知できない可能性があり、機会損失や営業効率の低下につながる可能性があります。購買グループ全体に焦点を当てるアプローチに移行することで、マーケティングと営業のより効果的な連携を実現できます。

              デジタル技術の進化により、BGMを実施するためのツールやプラットフォームが整備され、購買グループや複数の意思決定者を効率的にターゲットにすることが可能になっています。

              弊社が提供する顧客データ統合ソリューション「ユーソナー」には、企業や事業所単位の属性情報だけでなく、市場のニーズの高まりや企業がどのような領域に投資を強めているか、といった情報を可視化することができる膨大な企業情報データベースを内蔵しています。CRMやSFAのツールとユーソナーのデータを連携することで、購買グループの特定や顧客とのエンゲージメント強化につながるアクションを策定するといった目的で、多くのお客様にご利用頂いています。

              ユーソナーは顧客中心の分析環境の構築と、営業やマーケティングの戦略立案の効率化を、単一の統合データベースをもとに実現することが可能です。

              詳細についてはぜひこちらのページから、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

uSonar

ユーソナー編集部

MXグループ・編集長

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