B2B企業では、CRM(顧客関係管理)、SFA(営業支援システム)、MA(マーケティングオートメーション)、ERP(基幹業務システム)など、部門ごとに異なるシステムが並行して稼働していることが一般的です。それぞれのシステムに顧客情報や取引情報が蓄積される一方で、システム同士がつながっていないために、同じ顧客の情報が複数の場所で食い違う、集計のたびに手作業で突き合わせる、といった状況が生まれやすいと言われています。
こうした「データのサイロ化」を解消する手段として注目されるのが「システム間連携」です。連携の方式には、「API」「iPaaS」「ETL」「CSV」といった複数の選択肢があり、それぞれに得意な領域と不得意な領域があります。一方で、方式の違いを十分に整理しないまま「使い慣れているから」「ベンダーに勧められたから」という理由で選んでしまい、運用開始後に手戻りが発生するケースも少なくありません。
本記事では、代表的な4つの連携方式の特徴を整理した上で、自社に適した方式を選定するための基準と進め方、そして陥りやすい失敗パターンについて解説します。
システム間連携の方式を選ぶ前に整理すべきこと
連携方式の比較検討に入る前に、まず社内で整理しておきたい要素があります。この整理が不十分なまま方式の比較に入ると、技術的な機能の多寡だけで判断してしまい、業務上の目的から離れた選択になりやすいと考えられます。
- 連携の目的と達成したい状態
「営業とマーケティングで同じ顧客像を見たい」「経営会議で使う数値を自動集計したい」など、連携によって実現したい業務上の状態を言語化します。目的が明確になれば、必要な即時性やデータの粒度も自ずと定まります。定量的な目標と定性的な目標の両方を整理しておくことが推奨されます。
- 連携対象のシステムとデータ項目
どのシステムからどのシステムへ、どの項目を流すのかを一覧化します。顧客マスタ、商談情報、請求情報など、対象データによって求められる更新頻度やセキュリティ要件は異なります。この時点で「連携元のデータが正しい状態か」も併せて確認しておくことが重要です。
- 求められる更新頻度と即時性
リアルタイムに近い反映が必要なのか、日次や週次のバッチ処理で十分なのかを整理します。即時性の要求は方式選定に直結する要素であり、過剰な要求はコストの増大に繋がります。業務ごとに「許容できる遅延」を定義しておくと判断が容易になります。
- 社内の技術体制と運用担当
情報システム部門に開発リソースがあるのか、事業部門が自ら運用するのかによって、選べる方式の幅は変わります。運用開始後に誰がエラー対応や仕様変更を担うのかを、選定の段階で決めておくことが求められます。
- 予算と投資回収の考え方
初期構築費用、月額の利用料、保守にかかる人件費を合わせて、中期的な総コストで捉えます。連携によって削減できる手作業の工数や、データ活用による売上への貢献など、効果の測り方についても事前に合意しておくことが望まれます。
4つの連携方式の特徴(API・iPaaS・ETL・CSV)
システム間連携の代表的な方式は以下の4つに整理できます。それぞれの定義と特徴を確認します。
- API(Application Programming Interface)連携
APIとは、システム同士がプログラムを通じてデータや機能をやり取りするための接続仕様を指します。システムAで顧客情報が更新された瞬間にシステムBへ反映するといった、リアルタイム性の高い連携を実現することが可能です。一方で、接続のためのプログラム開発や、API仕様が変更された際の追随といった技術的な対応が必要となります。
- iPaaS(Integration Platform as a Service)
iPaaSとは、クラウド上で複数のSaaS(Software as a Service)やオンプレミスシステムを接続するための統合基盤サービスを指します。主要な業務システム向けの接続部品(コネクタ)があらかじめ用意されており、画面上の設定で連携フローを組み立てられる点が特徴です。開発工数を抑えつつ多数のシステムをつなぐことが可能ですが、利用料が継続的に発生する点や、コネクタが未対応のシステムには別途対応が必要となる点に留意が必要です。
- ETL(Extract / Transform / Load)
ETLとは、複数のデータソースからデータを抽出(Extract)し、形式を変換・加工(Transform)した上で、DWH(データウェアハウス)などの分析基盤へ格納(Load)する処理方式を指します。大量のデータを定期的にまとめて処理する「バッチ処理」に適しており、分析やレポーティングを目的とした連携で広く採用されています。リアルタイム性は高くありませんが、変換ロジックを一元管理できるため、データ品質の統制がしやすいと言われています。
- CSV(Comma-Separated Values)ファイル連携
CSV連携とは、システムからファイルとしてデータを出力し、別のシステムへ取り込む方式を指します。特別な開発を必要とせず、ほとんどのシステムが対応しているため、最も手軽に始められる方式と考えられます。ただし、手作業が介在しやすく、取り込み忘れや形式の不一致によるエラー、複数人が異なるバージョンのファイルを扱うことによる不整合が発生しやすい点が課題です。
4つの方式を主要な観点で整理すると、以下の通りです。
| 観点 |
API連携 |
iPaaS |
ETL |
CSV連携 |
| 即時性 |
高い (リアルタイム) |
中〜高 (設定による) |
低〜中 (バッチ) |
低い (手動・定期) |
| 開発負荷 |
高い |
低〜中 |
中 |
低い |
| 大量データ処理 |
中 |
中 |
高い |
中 (ファイルサイズ次第) |
| 属人化リスク |
中 |
低〜中 |
低〜中 |
高い |
| 継続コスト |
開発・保守人件費 |
サービス利用料 |
ツール費+人件費 |
作業担当者の工数 |
| 適した用途 |
システム即時同期 |
SaaS統合連携 |
データ基盤の集約 |
小規模・低頻度 |
なお、連携方式そのものの比較とは別に、「データを物理的に集約するのか、分散させたまま参照するのか」という統合アーキテクチャの観点も存在します。この観点については、弊社ブログのデータオーケストレーションとは:データを一元的に利活用するや、データフェデレーションとは:分散データを「統合」せずに「統一的」に利用するで解説していますので、併せてご参照ください。
連携方式の選定で押さえるべき5つの基準
前節の整理を踏まえ、以下の5つの基準で候補となる方式を評価します。自社のユースケースに照らして各基準に重み付けを行い、評価表を作成することが推奨されます。
- 即時性の要件との適合度
業務上どの程度の遅延まで許容できるかと、方式が提供できる更新頻度が合致しているかを確認します。営業担当者が商談前に最新の顧客情報を参照するような用途では即時性が重視され、月次の経営レポートであればバッチ処理で十分と考えられます。必要以上の即時性を求めると、開発負荷とコストが不釣り合いに増大します。
- 連携対象システムへの対応状況
連携したいシステムがAPIを公開しているか、iPaaSのコネクタが用意されているか、ETLツールが接続をサポートしているかを確認します。特に自社開発のシステムや古い基幹システムでは、接続手段がCSV出力に限られる場合もあります。対応状況によっては、複数方式の組み合わせが現実的な解となります。
- データ変換と品質統制の仕組み
システムごとに異なる項目名や表記(社名の表記ゆれ、住所の形式、日付形式など)を、どこで誰が整えるのかを確認します。変換ルールを一元管理できる方式は、データ品質を長期的に維持しやすいと言われています。連携の前段で名寄せやデータクレンジングを行う体制と併せて検討することが重要です。
- 運用体制と保守性
連携の設定変更やエラー対応を、情報システム部門が担うのか事業部門が担うのかによって、適した方式は変わります。プログラム開発を伴う方式は技術者の確保が前提となり、設定ベースの方式は事業部門でも運用しやすい一方で、設定内容のブラックボックス化に注意が必要です。担当者の異動や退職があっても継続できる仕組みかどうかも評価します。
- 総コストと拡張性
初期費用だけでなく、月額の利用料、保守にかかる人件費、連携対象が増えた際の追加コストを含めて中期的に評価します。将来的に連携するシステムが増える見込みがあるなら、拡張時のコスト構造を確認しておくことが求められます。連携対象の数と頻度によって、どの方式が有利かは変わると考えられます。
選定プロセスの進め方
連携方式の選定は、以下のプロセスで進めることが効果的とされています。
- 要件定義
「選ぶ前に整理すべきこと」で挙げた項目を、社内で合意できるドキュメントとして固めます。特に「対象データ」「許容できる遅延」「運用担当」の3点は、後工程の判断基準となるため明文化しておきます。
- 連携対象の棚卸しとデータ品質の確認
連携対象となるシステムと、そこに格納されているデータの状態を確認します。連携元のデータに重複や表記ゆれが残っていると、どの方式を選んでも連携先に誤った情報が流れ込むため、この段階で整備の要否を判断します。
- 方式の一次絞り込み
5つの基準に照らして、明らかに要件に合わない方式を除外します。この時点で「業務システム間はAPI、分析基盤へはETL」のように、用途ごとに方式を分ける判断をすることも一般的です。
- ツール・サービスの候補比較
絞り込んだ方式について、具体的なツールやサービスを比較します。競合他社の実名比較ではなく、自社の要件に対する適合度で評価表を作成することが推奨されます。
- PoC(概念実証)による検証
最も重要な連携シナリオを1〜2件選び、実データに近い条件で検証します。処理時間、エラー発生時の挙動、設定変更の容易さなど、評価軸と合否ラインを事前に定義しておきます。
- 最終選定と運用設計
投資判断者、利用部門、情報システム部門の三者で合意を形成します。あわせて、エラー時の対応フロー、変更管理の手順、定期的な見直しのタイミングを運用設計として定めます。
よくある失敗パターンと回避策
連携方式の選定現場でよく見られる失敗パターンと、その回避策は以下の通りです。
- 手軽さを優先してCSV連携が恒常化する
当初は暫定対応のつもりで始めたCSVでの受け渡しが、いつの間にか正式な業務プロセスとなり、担当者の手作業に依存し続けるケースです。回避策としては、CSV連携を採用する場合でも「いつまでに、どの方式へ移行するか」を最初に決めておくことが挙げられます。
- 即時性を過剰に求めてコストが膨らむ
すべての連携をリアルタイムで実現しようとした結果、開発と保守の負荷が想定を超えるケースです。回避策としては、業務ごとに許容できる遅延を定義し、即時性が必要な連携とバッチで十分な連携を切り分けることが有効です。
- 連携元のデータ品質を確認せずに接続する
連携の仕組みは完成したものの、連携元に残っていた重複や表記ゆれがそのまま連携先へ流れ、かえって混乱を招くケースです。回避策としては、連携の設計と並行して名寄せやデータクレンジングを行い、共通のキーで顧客を識別できる状態を整えることが重要です。サイロ化したデータを整える具体的な進め方については、データのサイロ化を解消する3つのアプローチとは?クレンジング・名寄せ・MDMを解説!で詳しく取り上げています。
- 運用担当と変更管理のルールが決まっていない
連携先システムの仕様変更やAPIの改定に気づかず、ある日突然データが流れなくなるケースです。回避策としては、選定時点で運用責任者を定め、エラー通知の仕組みと定期的な動作確認の頻度を決めておくことが求められます。
- 既存システムの制約を後から知る
連携方式を決めた後に、基幹システム側がAPIを公開していない、出力できる項目が限られているといった制約が判明するケースです。回避策としては、要件定義の段階で各システムの接続手段を確認しておくことが挙げられます。基幹システムの刷新を検討している場合は、基幹システム刷新はなぜ必要なのか?データを軸にしたシステム移行を4stepで解説も参考になります。
おわりに
本記事のポイントを3点にまとめます。①システム間連携にはAPI・iPaaS・ETL・CSVの4方式があり即時性や負荷の特性が異なる、②方式の手軽さや即時性だけで選ぶと運用コストの増大やデータ不整合に繋がる、③目的と許容遅延を定義し用途ごとに方式を使い分けつつ連携元のデータ品質を整えることが成功の鍵、という点です。
システム間連携の方式選定は、単なる技術の比較ではなく、自社のデータ活用をどう推進するかという議論そのものです。どの方式を選ぶにしても、連携するデータが「同じ顧客を同じものとして識別できる状態」になっていなければ、連携の効果は十分に発揮されません。本記事で紹介した基準とプロセスを押さえることで、失敗の確率を下げることができると考えられます。
弊社の顧客データ統合ソリューション「ユーソナー」は、「LBC」という独自のコード体系により、複数のシステムに分散した顧客情報を共通のキーで一元的に管理できます。CRMやSFA、MAとの連携実績も豊富で、特定の情報については弊社が開発したAPIを用いることで、よりリアルタイムに取得頂くことが可能です。連携方式の検討と併せて、連携元となる顧客データの整備についてもお気軽にご相談ください。
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