- 経済安全保障
<イベントレポート>高市早苗氏による経済安全保障セミナーの様子と企業側の課題
更新日: 2026年9月16日
2026年9月現在、経済安全保障は防衛関連産業や一部の大企業に限られたテーマではなく、B2B(企業間)の取引関係そのものを左右する経営課題へと位置付けが変わりつつあります。2026年6月には改正経済安全保障推進法が成立し、重要物資の供給に不可欠な役務の支援や、基幹インフラ制度の対象分野の拡大が図られました。こうした制度整備の進展を受け、企業間取引の現場では「サプライチェーンの可視化」「セキュリティ・評価制度への対応」「技術情報の管理強化」の3点への対応が急務となっています。
サプライチェーンの可視化は、どの企業からどの部材や役務を調達しているかを階層構造として把握する取り組みです。セキュリティ・評価制度への対応は、経済産業省が制度構築を進める「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」に代表される、共通基準への適合と証明の取り組みを指します。技術情報の管理強化は、取引や共同研究を通じた重要技術の意図せぬ流出を防ぐ取り組みです。いずれも単独の部門では完結せず、取引先との関係性の中で進める必要がある点が共通しています。
本記事では、企業間取引における経済安全保障対応を「自社完結型アプローチ」「取引先照会型アプローチ」の2つに体系化した上で、そのいずれの分類にも属さない新たな考え方としての「取引先データ基盤型アプローチ」について解説します。
目次
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一般的に「自社完結型アプローチ」とは、経済安全保障上のリスク対応を、自社の組織・規程・システムという管理可能な範囲の内側で完結させる進め方を指します。
企業間取引において自社完結型の思考で対策を立案することは、自社の意思決定だけで進められるため、着手のしやすさと統制の効きやすさに優れていると言われています。
具体的には、以下のような取り組みが該当します。
ただし自社完結型アプローチは、守備範囲が自社の境界線で止まるという性質を持ちます。経済安全保障上のリスクの多くが取引先を経由して顕在化する現状では、これだけでは十分と言い難い状況になりつつあります。
一般的に「取引先照会型アプローチ」とは、取引先にチェックシートや質問票を送付し、その回答を回収することで相手方の管理状況を確認する手法を指します。
企業間取引において取引先照会型で対策を立案することは、自社の境界を越えた範囲にまで管理の視野を広げることを意味します。契約条件と紐付けやすく、是正の要請まで一連のプロセスとして設計できる点も特徴です。
具体的には、以下のような取り組みが該当します。
取引先照会型アプローチには、2つの構造的な制約があると言えます。1つは、原則として回答が自己申告に基づくため、記載内容と実態の乖離を検証しにくい点です。もう1つは、確認の範囲が直接取引のある一次取引先にとどまりやすい点です。製造業を対象とした調査では、三次取引先以降を含めてサプライチェーン全体を可視化できている企業は25.0%にとどまり、二次取引先以降を把握できていない企業が44.5%に上る、という結果が報告されています ※2。照会という手段そのものが、深い階層の取引網まで届きにくい構造になっています。
「取引先データ基盤型アプローチ」とは、個別の照会や監査に先立って、取引先を一意に識別できるデータ基盤を整備し、そこに外部データを継続的に重ね合わせることで、取引網の構造そのものを把握しようとする考え方です。照会が「点」ごとの確認であるのに対し、こちらは「面」の把握を先に行うという違いがあります。
このアプローチは、取引先の対象が多く、かつ変化が速く、直接の接点を持たない相手まで視野に入れる必要がある領域で有効とされています。経済安全保障の文脈では取引先が数千社といった規模に及ぶことも珍しくなく、すべてを人手の照会で追い続けることは現実的ではないため、データを起点とする発想が求められると考えられます。
「取引先データ基盤型アプローチ」は、具体的には、以下のようなプロセスをたどると言えます。
「取引先データ基盤型アプローチ」は既存の2つのアプローチを置き換えるものではなく、限られた労力のなかで、照会や監査の対象をどこに向けるべきかを判断するための土台として機能する考え方だと整理できます。
「取引先データ基盤型アプローチ」は、リスク管理だけでなく、調達戦略や取引先開拓の高度化にも活用することが可能です。企業間取引において以下のような活用が期待できます。
取引先データ基盤型アプローチの具体例
「取引先データ基盤型アプローチ」により、限られた管理資源をリスクの高い領域に集中させることが可能となります。ただし、取引網を推定する部分はあくまで構造からの推論であるため、重要度の高い取引先については従来の照会や監査による事実確認と併用することで、より高い精度が期待できます。
本記事のポイントを3点にまとめます。
①経済安全保障対応は可視化・評価制度・技術管理の3点でB2B取引の条件に組み込まれつつある
②自社完結型と取引先照会型のアプローチだけでは二次取引先以降の実態把握に限界がある
③取引先を法人単位で統合したデータ基盤を土台に置くことで、管理資源の集中と継続的な監視が両立できる
です。
本記事でご紹介したアプローチはいずれも有用です。「自社完結型のアプローチ」は着手しやすい一方で、守備範囲が自社の境界で止まります。「取引先照会型のアプローチ」は契約と結び付けて要求水準を伝えられる一方で、自己申告への依存と一次取引先への偏りという制約を持ちます。
「取引先データ基盤型のアプローチ」は取引網を構造として捉えられる一方で、推定に基づく部分の検証を別途必要とします。3つのアプローチを状況に応じて使い分け、時には組み合わせることで、経済安全保障を踏まえた取引先管理の実効性を高めることが重要と考えます。
弊社が提供する顧客データ統合ソリューション「ユーソナー」では、社内に分散した取引先情報を「LBC」という独自のコード体系によって法人単位で統合し、一元的に管理することが可能です。日本最大の企業データベースを搭載しており、資本関係や企業グループを捉える系列データ、拠点情報などの外部データを継続的に付与できるため、取引網を構造として把握し、変化を追い続ける基盤としてご活用いただけます。
詳細についてはぜひこちらのページから、お気軽にお問い合わせください。
※1: 経済産業省「『サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針』(SCS評価制度の構築方針)を公表しました」(2026年3月27日)
https://www.meti.go.jp/press/2025/03/20260327001/20260327001.html
※2: JX通信社・株式会社Resilire「サプライチェーンリスクに関する実態調査2026」(2026年6月、製造業のSCM関連業務従事者532名)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000089.000044535.html
この記事を書いた人
ユーソナー編集部
MXグループ・編集長
ユーソナー編集部です。
主にBtoB事業を営む企業様に向け、これからの業務のあり方を考える上で有用なデータ活用やデジタル技術に関する情報を発信しています。
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