• 下請法・取適法

下請法と取適法:2026年施行の中小受託取引適正化法を解説

更新日: 2026年9月15日

近年、企業間のサプライチェーン全体において価格転嫁をはじめとする取引の適正化が重要な経営課題になっています。この文脈のなかでぜひとも踏まえておくべき法律が「取適法」です。

取適法は、長年「下請法」の通称で親しまれてきた法律の改正法(2025年5月成立)が2026年1月1日に施行されたものです。B2Bの企業間取引において、発注側(委託事業者)に課されるルールを大きく見直す内容です。受注側の中小受託事業者にとっても、自社が保護対象となるかどうかの判定基準が変わるため無関係ではありません。適用対象の判定基準や禁止行為が変わるため、購買・調達部門だけでなく、経理、法務、情報システム部門にも幅広い対応が求められます。

本記事では下請法と取適法の違いや、改正のポイント、企業に求められる対応についてご紹介します。

目次

下請法と取適法とは

「下請法」とは、1956年に制定された「下請代金支払遅延等防止法」の通称であり、発注側の事業者による代金の支払遅延や減額などの行為を規制し、受注側の中小事業者を保護するための法律です。独占禁止法を補完する法律として、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託といった委託取引を対象に運用されてきました。

「取適法」とは、この下請法の改正法として2026年1月1日に施行された「中小受託取引適正化法」の通称です。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」であり、改正法は2025年5月16日に成立、同月23日に公布されました。「下請」という言葉が上下関係を連想させることなどを踏まえ、法律名だけでなく、法律上の用語も大きく見直されています。

取適法の主な特徴は以下の通りです。

  • 対等なパートナーシップを前提とした用語への変更
    従来の「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」に、「下請代金」は「製造委託等代金」に改められました。発注側と受注側を上下関係ではなく、対等な取引関係として捉え直す趣旨があると言われています。呼称の変更に伴い、契約書や社内規程の文言見直しが必要となる場合があります。
  • 委託事業者の義務と禁止行為による規制構造
    取適法は、発注内容等の明示(改正により、受託側の承諾がなくても電磁的方法で明示できるようになりました。ただし書面の交付を求められた場合は遅滞なく交付する必要があります)、支払期日の設定(給付の受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間。役務提供委託は役務の提供を受けた日から起算)、取引記録の書類作成・保存、支払遅延時の遅延利息(年率14.6%)の支払という委託事業者の義務を定めています。
  • 公正取引委員会・中小企業庁による運用
    取適法は、公正取引委員会と中小企業庁が中心となって運用され、違反行為に対しては指導や勧告、企業名の公表などの措置が講じられます。改正により事業所管省庁との連携も強化され、より幅広い執行体制が整えられたとされています。

取適法における主な改正ポイント

下請法から取適法への改正では、以下のようなポイントが変更・追加されています。

  • 従業員数基準の追加による適用対象の拡大
    従来の資本金基準に加えて、常時使用する従業員数の基準が新たに導入されました。製造委託・修理委託・特定運送委託、プログラム作成に係る情報成果物作成委託、運送・倉庫保管・情報処理に係る役務提供委託では「委託側が300人超、受託側が300人以下」、それ以外の情報成果物作成委託・役務提供委託では「委託側が100人超、受託側が100人以下」の組み合わせが対象となります(資本金基準の3億円/5千万円の区分と同じ構造です)。資本金基準の組み合わせ、従業員数基準の組み合わせのいずれかに該当すれば適用対象となるため、従来は資本金基準で対象外だった取引が新たに対象となる場合があります。実質的な事業規模は大きいものの資本金が少額な事業者や、減資によって適用を免れる事例、受注側に増資を求める事例などに対応する狙いがあるとされています。
  • 手形払等の禁止
    製造委託等代金の支払において、約束手形による支払が禁止されました。電子記録債権や一括決済方式(ファクタリング等)についても、支払期日までに代金相当額の金銭を得ることが困難なものは認められないとされています。長い支払サイトの原因となってきた商慣行の見直しを促す改正です。
  • 協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止
    中小受託事業者からの価格協議の求めに応じず、一方的に代金額を決定する行為が新たに禁止されました。協議を明示的に拒否する場合だけでなく、協議の求めを無視したり繰り返し先延ばしにしたりする場合や、協議に必要な説明や情報提供を行わない場合も問題となり得るとされています。原材料費や労務費の上昇を適切に価格転嫁できる環境づくりを後押しする内容です。
  • 特定運送委託の追加
    物品の販売を行う事業者や、物品の製造・修理・情報成果物の作成を請け負う事業者が、その物品等を取引の相手方(顧客や顧客の指定先)に届けるための運送を他の事業者に委託する「特定運送委託」が、新たに対象取引に追加されました。自社拠点間の輸送のように取引の相手方への運送でないものは対象外です。従来、発荷主が運送事業者に委託する取引は役務提供委託に該当せず対象外でしたが、荷待ち・荷役の無償負担など荷主と物流事業者の間の問題が顕在化していたことを背景とした改正です。
  • 執行体制の強化
    公正取引委員会と中小企業庁に加えて、事業所管省庁の主務大臣にも指導・助言の権限が付与され、「面的執行」の強化が図られています。また、中小受託事業者が違反行為を申し出たことを理由とする不利益な取扱い(報復措置)の禁止についても、保護される申告先に事業所管省庁の主務大臣が追加され、実効性の確保が重視されています。

取適法対応の課題

取適法は中小受託事業者の保護を強化する一方で、委託事業者側の実務にはいくつかの課題が伴います。

  • 適用対象の再判定の負荷
    従業員数基準の追加により、自社と取引先の双方について、資本金だけでなく従業員数も踏まえて適用対象かどうかを判定し直す必要があります。取引先の従業員数は公開情報だけでは把握しにくい場合も多く、取引先マスタの情報が古いままでは正確な判定が困難です。判定を誤ると、意図せず法令違反となるリスクに繋がります。
  • 支払条件・支払手段の見直し
    手形払等の禁止に対応するため、支払手段の変更や支払サイトの短縮を進める必要があります。資金繰りへの影響が生じる場合もあるため、経理・財務部門を交えた計画的な移行が求められます。
  • 価格協議プロセスの整備
    協議を適切に行わない一方的な代金決定が禁止されたことで、価格協議の申し入れへの対応手順や記録の残し方を整備する必要があります。担当者ごとの対応のばらつきは違反リスクとなるため、組織としてのルール化が重要と考えられます。

なお、個別の取引が取適法の適用対象となるかどうかや、具体的な行為の適法性の判断には専門的な検討が必要です。公正取引委員会・中小企業庁の公表資料を確認するとともに、弁護士など専門家への相談を推奨します。

取適法対応のプロセス

取適法への対応は、以下のプロセスで進めることが効果的とされています。

  • 対象取引の棚卸し
    自社が発注側・受注側いずれの立場で行っている取引についても、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託のどの類型に該当するかを整理します。
  • 取引先情報の収集・整備
    取引先の資本金や従業員数といった企業属性情報を収集し、取引先マスタを最新の状態に整備します。適用対象の判定は取引先ごとに行う必要があるため、データの鮮度と網羅性が対応の土台となります。
  • 社内規程・契約書の見直し
    支払条件、発注書面のフォーマット、価格協議の手順などを取適法の要件に照らして見直します。「親事業者」「下請事業者」といった旧用語の置き換えも併せて実施します。
  • 業務システムの改修
    購買システムや会計システムにおける支払手段の設定、発注書面の記載項目、書類保存の仕組みなどを改修します。適用対象フラグを取引先マスタに持たせることで、運用の抜け漏れ防止に繋がります。
  • 運用モニタリングと教育
    施行後も、発注実務が法令に沿って運用されているかを定期的に点検し、購買・調達部門の担当者への教育を継続します。取引先の規模の変化により適用関係が変わる場合もあるため、継続的な確認が重要です。

取適法対応を実現する上で必要な役割

取適法への対応を組織的に進めるためには、以下の役割が必要です。

  • 法務・コンプライアンス部門
    改正内容の解釈や社内規程・契約書への反映を主導し、判断に迷う事案について専門家と連携する役割を担います。全社向けの研修やガイドラインの整備も重要な業務です。
  • 購買・調達部門
    日々の発注実務において、発注書面の交付や価格協議への対応を適切に行う役割を担います。現場の運用実態を法務部門にフィードバックすることで、実効性のある体制づくりに貢献します。
  • 経理・財務部門
    支払手段の変更や支払サイトの管理、遅延利息の防止など、資金面での対応を担います。手形払等の禁止への移行計画の策定においても中心的な役割を果たします。
  • 情報システム部門・データ管理担当
    取引先マスタの整備や業務システムの改修を担います。取引先の企業属性情報を継続的に更新できる仕組みを構築することが、適用判定の精度を支えます。

おわりに

本記事のポイントを3点にまとめます。

①取適法とは下請法を改正し2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法の通称

②従業員数基準の追加や手形払等の禁止により委託事業者には適用判定や支払実務の見直しが必要

③取引先の企業属性情報を整備し部門横断で対応体制を構築することが実務のカギ

です。

取適法への対応では、法改正の内容を理解するだけでなく、自社の取引先が適用対象となるかを正しく判定できる状態を整えることが重要です。特に、従業員数基準の追加により、取引先の資本金だけでなく従業員数などの企業属性情報を継続的に把握・更新する必要性が高まっています。

しかし、取引先情報が複数のシステムや部門に分散していたり、古い情報のまま管理されていたりすると、適用判定や取引先マスタの整備に大きな負荷がかかります。取適法対応を実務に落とし込むためには、正確で鮮度の高い企業データをもとに、取引先情報を一元的に管理できる環境づくりが欠かせません。

ユーソナーでは、日本最大級の法人企業データベース「LBC」をもとに、企業情報の名寄せ・クレンジング・属性付与を支援しています。取引先マスタの整備や企業属性情報の更新を通じて、取適法対応に必要な対象取引の把握や、部門横断でのデータ活用基盤づくりをサポートします。

詳細についてはぜひこちらのページから、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

uSonar

ユーソナー編集部

MXグループ・編集長

ユーソナー編集部です。
主にBtoB事業を営む企業様に向け、これからの業務のあり方を考える上で有用なデータ活用やデジタル技術に関する情報を発信しています。

ユーソナーは業種・業界問わず
様々な企業において活用いただいております。

  • Ministry of Economy, Trade and Industry.
  • Asahi
  • BIZ REACH
  • NITORI BUSINESS
  • FUSO
  • MIZUHO
  • PayPay
  • Ministry of Economy, Trade and Industry.
  • Asahi
  • BIZ REACH
  • NITORI BUSINESS
  • FUSO
  • MIZUHO
  • PayPay
  • RICOH
  • 弁護士ドットコム
  • りそな銀行
  • SAKURA internet
  • SATO
  • 株式会社そぞん情報システムズ
  • Suzuyo
  • RICOH
  • 弁護士ドットコム
  • りそな銀行
  • SAKURA internet
  • SATO
  • 株式会社そぞん情報システムズ
  • Suzuyo

ITreview Grid Award 2026 Summer
リーダー認定6部門

  • ITreview Grid Award 2026 Summer
  • 企業データベース
    ABMツール
    営業リスト作成ツール
    セールスイネーブルメントツール
    反社チェックツール
    名刺管理ソフト

ユーソナーなら、
貴社の課題も解決へ導きます!

導入事例サンプルレポート
ダウンロード

すべての『資料』を見る
導入事例やサンプルレポートをダウンロード

お急ぎの方はお電話にて03-5388-7000受付時間 10:00 〜 17:00(土日祝休)

データ活用による営業DXの決定版

サービス資料

5分で分かる ユーソナー

5分で分かるユーソナー

資料ダウンロード