企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、CRMやMA(マーケティングオートメーション)、SFA、ERPなど、部門ごとに多様なシステムを導入する企業が増えています。一方で、システムの数が増えるほど「必要なデータが他部門にあって使えない」「同じ顧客の情報がシステムごとにバラバラに存在する」といった声も多く聞かれるようになりました。
このような状態は「データのサイロ化」と呼ばれ、データ活用の推進における代表的な障壁の1つと言われています。サイロ化を放置すると、営業効率の低下や経営判断の歪みなど、目に見えにくい損失が積み重なっていくと考えられます。
本記事では、データのサイロ化の定義と原因、引き起こされる課題、そして「名寄せ」や「データクレンジング」を通じて一元管理を実現するプロセスについて解説します。
データのサイロ化とは
データのサイロ化とは、部門やシステムごとにデータが孤立して保管され、組織を横断した参照・活用ができなくなっている状態を指します。「サイロ」とは穀物を貯蔵する塔状の倉庫のことで、それぞれが独立して外部とつながらない様子から、分断されたデータ環境の比喩として用いられています。
サイロ化は特定のツールの問題ではなく、組織構造や業務プロセスに起因して自然発生することが多いと言われています。主な発生要因は以下の通りです。
- 部門最適でのシステム導入
営業部門はSFA、マーケティング部門はMA、経理部門はERPというように、各部門が自部門の業務効率を優先してシステムを選定すると、データの保管場所が分散します。導入時点では合理的な判断であっても、全社視点でのデータ連携が考慮されていないため、結果としてサイロが生まれやすくなります。
- 組織の縦割り構造
部門間でデータを共有する文化やルールが整備されていない場合、データは「その部門の資産」として抱え込まれる傾向があります。共有のためのインセンティブや責任の所在が曖昧なままでは、システムを連携しても実質的なサイロ状態が続くと考えられます。
- データ形式・粒度の不統一
同じ「顧客」を扱っていても、システムによって企業単位・事業所単位・担当者単位と粒度が異なったり、社名や住所の表記ルールが異なったりします。形式が揃っていないデータは機械的に突き合わせることができず、事実上の分断状態となります。
サイロ化が引き起こす課題
サイロ化されたデータ環境を放置すると、業務効率から経営判断まで、幅広い領域に影響が及ぶと言われています。代表的な課題は以下の通りです。
- 重複データによる業務の非効率
同一企業の情報が複数のシステムに別々のレコードとして存在すると、営業担当者が同じ企業に重複してアプローチしてしまうなどの無駄が生じます。既存顧客に新規向けの案内を送ってしまうケースもあり、業務コストの増大だけでなく顧客からの信頼低下にも繋がります。
- データ品質の劣化
社名の表記ゆれ(「株式会社」と「(株)」など)や、移転・社名変更が反映されない鮮度の劣化は、サイロごとに個別管理されている環境で特に進行しやすいと言われています。品質の低いデータに基づく施策は精度が上がらず、データ活用そのものへの社内の信頼を損なう要因にもなります。
- 経営判断の歪み
部門ごとに集計の元となるデータが異なると、「どの数字が正しいのか」を判断できず、会議が数字合わせに終始してしまいます。SSOT(Single Source of Truth)と呼ばれる「信頼できる唯一の情報源」が存在しないため、意思決定のスピードと精度の両方が低下すると考えられます。
- セキュリティ・ガバナンス上のリスク
データの保管場所が分散していると、誰がどの情報にアクセスできるのかを一元的に把握することが難しくなります。個人情報保護の観点でも、管理の目が届かないデータが残り続けることはリスク要因となります。
一元管理によって得られるビジネスメリット
サイロ化を解消し、データを一元管理することで、以下のようなビジネスメリットが得られると言われています。
- 意思決定の質とスピードの向上
全部門が同じ統合データを参照することで、SSOTが確立され、数字の食い違いによる確認作業が不要になります。経営層は正確な事業の全体像に基づいて、迅速に判断を下すことが可能です。
- 営業・マーケティング活動の高度化
顧客企業の情報を1つのビューで把握できるようになると、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)のようなアカウント単位の戦略的なアプローチが実現します。マーケティングが獲得したリードと営業の商談情報が紐づくことで、部門をまたいだ一貫した顧客体験を提供することにも繋がります。
- 業務効率化とコスト削減
重複データの排除により、二重アプローチや手作業でのデータ突き合わせといった無駄な業務が削減されます。各部門が個別にデータを購入・整備するコストも抑制することが可能です。
- データガバナンスの強化
データの所在と管理責任が明確になることで、アクセス権限の統制や個人情報の適切な取り扱いを組織的に担保しやすくなります。監査対応や法令遵守の観点でも、一元管理は有効な基盤になると考えられます。
サイロ化を解消し一元管理を実現するプロセス
サイロ化の解消は、単にデータを1か所に集めるだけでは実現しません。一般的には以下のプロセスを経て進められます。
- ステップ1:データの棚卸しと現状把握
どの部門が、どのシステムで、どのようなデータを保有しているかを可視化します。データの項目、件数、更新頻度、管理責任者を整理することが、後続の統合設計の土台になります。
- ステップ2:データクレンジング
「データクレンジング」とは、表記ゆれ・欠損・誤記・重複などの不備を検出し、修正・整形する作業を指します。たとえば社名の前株・後株の統一、住所や電話番号の形式統一、廃業企業や移転情報の反映などが該当します。クレンジングを経ていないデータは、次の名寄せの精度を大きく下げる要因になると言われています。
- ステップ3:名寄せ
「名寄せ」とは、複数のデータベースに散在する同一企業・同一人物のレコードを特定し、1つに統合する作業を指します。表記が異なる同一企業を紐づけるには、社名・住所・電話番号などの複数項目による照合や、企業を一意に識別する統合キー(企業コード)の付与が有効です。名寄せの精度が、一元管理されたデータ全体の信頼性を左右すると考えられます。
- ステップ4:統合基盤への集約と連携設計
クレンジング・名寄せを経たデータを、CDPやDWH(データウェアハウス)などの統合基盤に集約します。既存のCRMやMAとはAPIやETLで連携し、各部門が日常業務の中で統合データを参照できる環境を整えます。
- ステップ5:継続的な運用とモニタリング
企業データは移転・社名変更・組織再編などにより日々変化するため、一度統合しても放置すれば再び品質が劣化します。更新ルールと品質指標を定め、定期的なクレンジング・名寄せを運用として組み込むことが重要です。
一元管理を実現する上で必要な役割
データの一元管理を成功させるためには、以下のような役割が必要と言われています。
- データアーキテクト
全社のデータ統合方針を設計し、統合キーの定義やデータモデルの標準化を担います。部門ごとに異なるデータの粒度や形式を、どのような構造で統合するかを決める中核的な役割です。
- データエンジニア
クレンジングや名寄せの処理、システム間のデータ連携を実装します。ETLパイプラインの構築やAPI連携の開発など、設計を実際に動く仕組みへと落とし込む役割を担います。
- データスチュワード
統合後のデータ品質を継続的に管理する役割です。品質指標のモニタリング、更新ルールの運用、部門からの問い合わせ対応などを通じて、一元管理されたデータの信頼性を維持します。
- ビジネス部門のプロジェクトマネージャー
営業・マーケティングなど利用部門の要件を整理し、統合データが実務で使われる状態を作ります。現場からのフィードバックを設計側に還元することで、形だけの統合に終わらせないための要となります。
おわりに
本記事のポイントを3点にまとめます。①データのサイロ化とは部門やシステムごとにデータが孤立し全社で活用できない状態、②放置すると重複アプローチや経営判断の歪みなど幅広い損失に繋がる、③クレンジングと名寄せを経た一元管理と継続的な運用が解決の鍵、という点です。
データのサイロ化は、部門最適の積み重ねから自然に発生するため、どの企業にも起こり得る課題です。その解消には、データクレンジングと名寄せによる品質の担保、統合基盤の整備、そして継続的な運用体制の3つが不可欠と考えられます。
弊社の顧客データ統合ソリューション「ユーソナー」は、サイロ化した社内の顧客データを統合し、一元管理を実現するための機能を提供しております。「LBC」という独自のコード体系による顧客情報の管理に加え、日本最大級の企業情報データベースを活用した高精度な名寄せと、鮮度の高い外部情報の継続的な取得が可能です。
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