• データ活用

企業情報の統合戦略における「データファブリック」の重要性 -自社のデータ資産の価値を最大化-

更新日: 2025年6月24日

近年、企業活動におけるデータの重要性はますます高まり、経営資源としてのデータをいかに有効に活用するかが競争優位性を左右するようになっています。一方で、多くの企業では部署ごとに異なるシステムが乱立し、組織内にデータが散在する「データのサイロ化」が課題となっています。

この課題に対し、革新的なアプローチのひとつとして注目されているのが「データファブリック」です。本記事では、データファブリックがもたらすビジネス価値や導入のポイント、そして企業文化への影響について、B2B領域の視点から解説します。

目次

データファブリックとは何か?

データファブリックとは、企業内外に点在する複数のデータソースを仮想的に統合し、一元的なデータビューを提供するアーキテクチャです。従来のようにデータを物理的に集約するのではなく、分散したままでもシームレスにアクセス・分析が可能であり、特にクラウド、オンプレミス、レガシー環境といった異なる基盤間のデータ連携に強みを発揮します。データファブリックは企業におけるデータ活用の「共通インフラ」として、単一部門の業務効率化だけでなく部門横断でのデータ活用環境の構築に寄与します。

この技術の特長は、既存のITインフラを大幅に変更することなくデータ統合が実現できる点にあります。結果として、投資対効果の高いデジタル変革を推進できます。

データファブリックの価値

データファブリックの導入により、営業・マーケティング・カスタマーサクセス・財務など部門間でのデータ連携が促進されます。API連携やデータ仮想化技術を活用することで、データのサイロ化が解消され、部門横断的にデータを参照することができ、部門間の情報共有が円滑になります。

さらに、全社的なデータガバナンス体制を構築することで、データの信頼性や整合性も担保されます。データレイクやカタログなどを活用し、構造化/非構造化データを問わず有効活用することで、部門の枠を超えた意思決定基盤を整えることが可能です。

意思決定の高度化による組織文化の変革

データファブリックの導入は、単なる技術革新にとどまりません。組織全体の意思決定文化や働き方にも影響を与えます。データに基づく判断を標準化することで、属人的な経験や直感に依存しない、透明性と論理性に裏付けられた組織運営が可能になります。

統合されたデータビューにより、経営層やマネージャーは断片的な情報に頼るのではなく、企業全体を見通した戦略判断を行うことが可能になります。また、リアルタイムデータに基づく迅速な対応により、市場の変化に即応する組織体制を整えることができます。

加えて、ノーコード/ローコードツールやセルフサービスBIの普及により、非IT部門の担当者でも必要なデータに簡単にアクセスできるようになります。これはいわゆる「データの民主化」を進め、全社的な意思決定の質を底上げする効果をもたらします。

実際に、データを共通言語とした部門間の連携や、ビジネスゴールやKPIなどの定量的マネジメントとの親和性も高く、戦略実行力の強化にも寄与します。

データファブリックの活用例と可能性

データファブリックは部門内での活用および部門関連携の両方において効果を発揮します。

例えば各部門内でのデータファブリックの活用例としては、以下のような内容が挙げられます。

営業部門

  • 商談管理の高度化:CRM/SFAに蓄積された活動履歴・過去の案件履歴を一元的に可視化。
  • ターゲティング強化:Web行動や興味関心と商談成功傾向を関連付け、ホットリードを抽出。
  • 営業活動の可視化:活動件数や反応率による営業効率やKPI達成度をリアルタイムに集約。

マーケティング部門

  • 施策別のデータ統合:広告、MA(マーケティングオートメーション)、ウェビナー、展示会、SNS、SEOなど、複数チャネルのデータを統合し、カスタマージャーニー全体を分析。
  • リアルタイムパフォーマンス監視:広告媒体別のCPCやCVRを常時モニタリング。
  • ペルソナ別キャンペーン自動化:過去行動と顧客属性を複合したセグメントの導出。

カスタマーサクセス部門

  • 顧客管理の強化:契約情報、利用ログ、サポート履歴を活用した顧客スコアを動的に更新。
  • 解約予兆の自動検知:異常行動(例:ログイン減少、利用機能の偏り)を検出。
  • 担当者別の顧客対応履歴の集約:サポート・CSツール・MAからの情報を自動連携。

財務部門

  • 部門別P/Lの統合表示:各事業部のERP・会計システムの値をリアルタイムで集約。
  • ROI分析の自動化:施策別コストと成果を連携させ、販促活動の費用対効果を即座に把握。
  • 決算処理の省力化:各部署の経費や売上情報を自動収集して、締め処理を効率化。

例えば部門間の連携のためにデータファブリックを活用する例としては、以下のような内容が挙げられます。

例① 営業 × マーケティング

  • リードスコアの連携:MAツールで蓄積したリードスコアや行動履歴を営業が即時に参照し、最適タイミングでアプローチ。
  • 商談化率向上を目的としたフィードバックループの構築:営業から得た商談・失注データをマーケに返却し、施策最適化に活用。マーケティング活動で得たリードの質を営業がフィードバックすることで、営業活動の効率化に寄与する施策設計を実現。

例② マーケティング × カスタマーサクセス

  • 満足度の高い顧客への紹介依頼:活用度が高い企業のNPSや利用実態をもとに、ユーザー事例を作成。
  • オンボーディング完了後の教育施策:マーケ部門がオンボーディング状況を把握し、セミナーなどを案内。
  • 顧客の声を活かしたコンテンツ企画:CS部門が得た成果や課題感をマーケがホワイトペーパーなどに活用。

例③ カスタマーサクセス × 財務

  • LTV(顧客生涯価値)の動的分析:利用傾向×継続率×売上データを組み合わせたLTV計算結果のリアルタイム同期と動的な算出。
  • プロジェクト別利益率の分析:顧客別に、活動時に使用したコストと結果的に得た利益を精緻に可視化。
  • 解約と収益への影響分析:CS活動と財務結果(売上損失)を結びつけて、施策改善に活用。

また、AIや機械学習の基盤としても、データファブリックは極めて相性の良い構造を持ちます。例えば、予測分析や顧客パーソナライズ、オペレーションの自動化など、先進的な活用が期待されています。

スケーラブルかつ柔軟な設計によって、将来のデータ拡張や新たなデータソース追加にも耐え得る拡張性を持ち、持続的な競争優位性の獲得に貢献します。

導入に伴う課題と実行ポイント

データファブリックの導入においては、以下のような課題が予想されます。

  • レガシーシステムとの互換性の確保:段階的な移行や外部パートナーによる技術支援がカギとなります。
  • データ品質の維持:定期的な監査とメタデータ管理、クレンジングの仕組み構築が不可欠です。
  • 社内教育と意識改革:全社的なデータリテラシーの向上が、活用定着に直結します。

これらに加え、ガバナンスやセキュリティの観点から、アクセス制御や暗号化、GDPRや国内の個人情報保護法対応などの施策も同時に進める必要があります。

まとめ

データファブリックは、B2B企業が抱えるデータ統合・活用の壁を乗り越え、真にデータドリブンな経営を実現するための鍵となる技術です。導入には段階的なアプローチが求められますが、正しい設計と社内巻き込みにより、その恩恵は非常に大きなものとなります。
データが資産であることが前提となるこの時代において、データファブリックの導入は、将来を見据えた経営の礎となるでしょう。

組織の"データ資産"が力を発揮するには、その前提として「正しい情報が、正しい形でつながっていること」が重要です。
現場で収集される名刺情報、SFAに記録された活動履歴、Web経由のリード情報...。こうしたデータが別々に存在しているだけでは、統合基盤も、その力を発揮できません。

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この記事を書いた人

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ユーソナー編集部

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