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戦略情報システム(SIS)とは? ビジネスメリットと営業・マーケでの5つの活用例を解説!

更新日: 2026年9月28日

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)やデータドリブン経営が多くのB2B企業で推進される中で、あらためて注目されているのが「戦略情報システム(SIS:Strategic Information System)」という考え方です。SISは1980年代に提唱された概念ですが、「情報システムを単なる業務効率化の道具ではなく、競争優位を生み出す武器として位置づける」というその本質は、CRMやMA(マーケティングオートメーション)、企業データベースを活用する現代のセールス・マーケティングにおいても色あせていないと言われています。

一方で、SISという言葉は聞いたことがあっても、「一般的な業務システムと何が違うのか」「自社の営業やマーケティングにどう関係するのか」を具体的に説明できる方は多くありません。

本記事では戦略情報システム(SIS)の定義と成り立ち、ビジネスメリット、セールスとマーケティングにおけるユースケース、構築に向けた課題とプロセスについて解説します。

目次

戦略情報システム(SIS)とは

戦略情報システム(SIS:Strategic Information System)とは、企業の経営戦略や競争戦略を実現するために情報技術を活用し、競合他社に対する優位性を生み出すことを目的とした情報システムのことです。SISの概念は、1985年にアメリカの経営学者チャールズ・ワイズマン(Charles Wiseman)氏が著書『Strategy and Computers』で提唱したものとされており、同氏は「企業の競争戦略を支援・形成する情報技術の利用法」としてSISを位置づけました(ITmedia『情報システム用語事典』より)。日本では1989年に同書の日本語版が出版されたことをきっかけにSISブームが起こり、多くの企業が「情報システムで競争に勝つ」というテーマに取り組んだと言われています。

SISを理解する上で重要なのは、システムそのものの技術的な新しさではなく、「経営戦略と結びついているかどうか」という点です。同じ受注管理システムであっても、社内の事務処理を省力化するために導入されたものは「業務情報システム」であり、顧客の発注コストを下げて自社への囲い込みを実現するために設計されたものは「戦略情報システム」と呼ばれます。つまり、SISは「システムの種類」ではなく「システムの使い方・目的」を表す概念であると言えます。

SISの代表的な事例として最もよく挙げられるのが、米アメリカン航空の座席予約システム「SABRE」です。旅行代理店の端末に自社の予約システムを設置することで、代理店が自社便を優先的に販売する構造を作り出し、大きな競争優位を獲得したと言われています。また、日本では近畿日本ツーリストの旅館予約オンラインシステムや、コンビニエンスストアのPOSシステムを活用した単品管理などが、SISの文脈で語られてきました(Wikipedia『戦略情報システム』より)。

SISの主な特徴は以下の通りです。

  • 経営戦略との直結
    SISは経営戦略や事業戦略から出発し、「その戦略を実現するためにどのような情報が必要か」という観点で設計されます。情報システム部門の都合や既存業務の延長線上から発想されるものではなく、経営層や事業責任者が主体的に関与する点が特徴です。
  • 競争優位の創出
    SISの目的は、コスト削減や差別化、新市場の創造、取引先との提携強化といった「競争上の打ち手」を情報技術によって実現することにあります。ワイズマン氏は、差別化・コスト・革新・成長・提携という「5つの戦略的スラスト」を情報技術で支援する枠組みを示しています。
  • 社外への働きかけ
    多くの業務システムが社内の効率化を対象とするのに対し、SISは顧客・取引先・チャネルといった社外のプレイヤーとの関係性を変えることを狙います。顧客の発注業務に自社システムを組み込む、取引先とデータを共有して離れにくくする、といった「囲い込み」がその典型です。
  • 情報の資産化
    SISでは、取引や顧客接点を通じて蓄積されるデータそのものを経営資源として扱います。POSデータから売れ筋を把握する、顧客の購買履歴から次の提案を導くなど、蓄積した情報を戦略的意思決定に活用するサイクルが組み込まれています。

なお、SISは1990年代に入ると「特別なシステムを作れば競争に勝てる」という過度な期待が薄れ、言葉としては使われる機会が減りました。しかし、その思想はCRMやSFA、ERP、BI、そして現在のデータドリブン経営やDXへと引き継がれていると考えられます。

戦略情報システム(SIS)のビジネスメリット

戦略情報システムの考え方を採用することで、企業は以下のようなビジネスメリットが得られると言われています。

  • 競争優位の確立と持続
    自社ならではの情報資産や仕組みを構築することで、価格や製品スペックだけでは模倣されにくい優位性を作ることが可能です。例えば、顧客の設備稼働データを継続的に取得し、最適なタイミングで消耗品や保守を提案できる仕組みを持つメーカーは、単に製品を安く売る競合に対して優位に立つことができます。
  • 顧客との関係強化(スイッチングコストの向上)
    顧客の業務プロセスに自社のシステムやデータが組み込まれると、顧客が他社に乗り換える際の手間やリスクが大きくなります。SISの古典的な事例である発注端末の設置は、まさにこの効果を狙ったものであり、現代においては顧客専用ポータルやAPI連携がその役割を担っています。
  • 意思決定の迅速化と精度向上
    SISでは、蓄積されたデータをもとに経営層や現場が判断を下せる状態を作ります。営業の案件進捗、マーケティング施策の反応、市場の変化を一元的に把握できることで、勘や経験だけに頼らない意思決定が可能となり、変化への対応速度が上がります。
  • 新たなビジネスモデルの創出
    情報を軸にすることで、従来の製品・サービスの枠を超えた新しい価値提供が生まれることがあります。取引データを分析して顧客に業界動向レポートを提供する、蓄積したデータを外部企業向けのサービスとして展開するなど、情報そのものが収益源に変わる可能性があります。
  • 部門横断での戦略実行力の向上
    経営戦略を起点にシステムを設計するため、営業・マーケティング・カスタマーサクセス・経営企画といった部門が同じ情報基盤を共有しやすくなります。これにより、部門ごとに分断されていた顧客情報が統合され、戦略が現場のアクションに繋がりやすくなります。

セールス・マーケティングにおける戦略情報システム(SIS)のユースケース

SISの思想が最も直接的に価値を発揮する領域の1つが、B2B企業のセールスとマーケティングです。ここでは、企業データや顧客データを戦略的に活用する具体的なユースケースをご紹介します。

  • ターゲットアカウントの選定とABMの推進(マーケティング)
    ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)を実践するためには、「どの企業を狙うべきか」を客観的に判断する情報基盤が必要です。自社の既存顧客データを企業規模・業種・所在地・系列といった属性で分析し、受注確度の高い企業像を導き出した上で、外部の企業データベースから同じ条件に合致する未接触企業を抽出することで、限られたリソースを最も成果が見込めるアカウントに集中させることが可能となります。これは「情報によって攻めるべき市場を定義する」というSISの考え方そのものです。
  • リードの優先順位付けとインサイドセールスの効率化(セールス)
    Webサイトの閲覧履歴や資料ダウンロードといった行動データに加え、企業の業績や従業員数、購買意欲を示すインテントデータを組み合わせてリードをスコアリングすることで、インサイドセールスは「今アプローチすべき企業」から順に架電やメール送信を行うことができます。営業担当者の経験に依存していた優先順位付けをデータで標準化することは、営業組織全体の生産性向上に繋がります。
  • 既存顧客のアップセル・クロスセル機会の発見(セールス)
    受注履歴・契約情報・サポート問い合わせ履歴を顧客単位で統合し、「同業種・同規模の顧客が導入している製品をまだ利用していない顧客」や「契約更新時期が近づいている顧客」を自動的に抽出する仕組みは、SISの典型的なユースケースです。例えば、あるSaaS企業が顧客の利用ログと契約データを組み合わせて解約リスクの高い顧客を早期に検知し、カスタマーサクセスが先回りして支援する取り組みは、既存顧客からの収益を守り育てる戦略的な情報活用と言えます。
  • 企業グループ・系列を踏まえた営業戦略の立案(セールス)
    B2B取引においては、親会社・子会社・関連会社といった企業グループの構造が意思決定に大きく影響します。ある子会社との取引実績をもとにグループ全体への横展開を図る、あるいは競合が親会社に深く入り込んでいる系列を見極めて優先度を調整するなど、企業間の関係性データを営業戦略に組み込むことで、個社単位の営業では見えなかった機会とリスクを把握することが可能です。
  • マーケティング施策の効果測定と投資配分の最適化(マーケティング)
    展示会・Web広告・セミナー・コンテンツといった施策ごとに、獲得したリードがその後どの程度商談化・受注化したかを追跡できる仕組みを整えることで、マーケティング予算を「感覚」ではなく「受注への貢献度」で配分できるようになります。この際、リード情報の企業名表記ゆれを統一し、同一企業として名寄せしておくことが、正確な効果測定の前提となります。

これらのユースケースに共通しているのは、「社内外のデータを統合し、戦略的な問いに答えられる状態を作る」という点です。個別のツールを導入するだけではSISにはならず、営業戦略・マーケティング戦略との結びつきがあってはじめて競争優位に繋がると考えられます。

戦略情報システム(SIS)実現への課題

戦略情報システムには多くのメリットがある一方で、その実現にはいくつかの課題が伴います。

  • 戦略とシステムの乖離
    最も多い失敗は、経営戦略が曖昧なままシステム構築が先行してしまうケースです。「競合が導入しているから」「最新技術だから」という理由で始まったプロジェクトは、完成しても何の競争優位にも繋がらないことが少なくありません。SISの出発点は常に「自社はどこで勝つのか」という戦略的な問いであることが求められます。
  • データの分散と品質の低さ
    営業部門のSFA、マーケティング部門のMA、経理部門の基幹システムにそれぞれ顧客情報が存在し、社名の表記ゆれや重複、情報の陳腐化が放置されている状態では、戦略的な分析は成り立ちません。取引先の社名変更や合併、拠点移転などにより顧客データは日々劣化していくため、外部の企業情報と照合しながら鮮度を保つ仕組みが必要です。
  • 模倣による優位性の消失
    情報技術そのものは購入可能であるため、システムの機能だけで生まれた優位性は競合に模倣されやすいと言われています。SISブームが終息した背景にも、「特別なシステムを作れば勝てる」という期待が現実には長続きしなかったことがあります。持続的な優位を築くためには、システムに加えて、蓄積されたデータや運用ノウハウ、顧客との関係性といった模倣しにくい資産を組み合わせることが重要です。
  • 部門間の協力体制の不足
    SISは営業・マーケティング・情報システム・経営企画といった複数部門をまたぐ取り組みです。データの入力ルールや共有範囲をめぐって部門間の利害が対立し、プロジェクトが停滞することも珍しくありません。経営層がスポンサーとして関与し、部門横断で目的を共有する体制づくりが欠かせません。
  • 投資対効果の見えにくさ
    SISの効果は、業務効率化のように工数削減という形で即座に数値化できるものではなく、受注率の向上や顧客の維持率改善といった形で中長期的に現れます。そのため、導入前に評価指標を定義し、小さな範囲で効果を検証しながら段階的に投資を拡大していくアプローチが推奨されます。

戦略情報システム(SIS)の構築プロセスと必要な役割

戦略情報システムは、一般的に以下のプロセスを経て構築・運用されます。

  1. 戦略目標の明確化
    経営戦略・事業戦略を起点に、「どの市場で、どの顧客に対して、どのような優位性を築くのか」を定義します。セールス・マーケティング領域であれば、「特定業種における新規顧客獲得数の倍増」「既存顧客の解約率半減」といった具体的な目標に落とし込みます。
  2. 必要な情報とデータソースの特定
    目標を達成するために必要な情報を洗い出し、社内に存在するデータ(SFA、MA、基幹システム、問い合わせ履歴など)と、社外から取得すべきデータ(企業属性、企業グループ情報、インテントデータなど)を整理します。
  3. データの統合と品質整備
    分散したデータを共通のキーで結びつけ、表記ゆれの統一や重複排除、最新情報への更新を行います。この段階で企業を一意に識別するコード体系を整えておくことが、後の分析精度を大きく左右します。
  4. 分析・活用の仕組みの実装
    統合されたデータをもとに、ターゲット抽出、スコアリング、ダッシュボードといった具体的な活用機能を構築し、営業やマーケティングの日常業務に組み込みます。
  5. 運用とモニタリング
    施策の結果を計測し、戦略目標に対する進捗を継続的に確認します。市場や競合の変化に応じて、狙う顧客像やデータの取得範囲を見直すサイクルを回すことで、SISは「作って終わり」ではなく生き続ける仕組みになります。

このプロセスを成功させるためには、以下の役割が必要です。

  • 経営層・事業責任者(スポンサー/オーナー)
    SISの目的である競争戦略を定義し、部門横断の取り組みに対して意思決定と資源配分を行います。情報システム部門任せにせず、経営課題として関与し続けることが求められます。
  • データアーキテクト
    社内外のデータをどのように統合するか、企業を識別するキーをどう設計するかといった全体構造を設計します。SFAやMA、企業データベースといった複数システムをまたぐ整合性を担保する役割です。
  • データエンジニア
    設計に基づき、データの収集・変換・連携を実装します。APIによる外部データの取得や、各ツールへの連携基盤の構築を担います。
  • セールス・マーケティングの実務リーダー
    現場の業務要件を定義し、構築された仕組みを実際の営業活動・マーケティング施策に組み込みます。運用結果をフィードバックし、改善を主導する役割でもあります。
  • データアナリスト
    統合されたデータを分析し、ターゲット企業像の抽出やスコアリングモデルの設計、施策効果の可視化を通じて、戦略的な示唆を導き出します。

おわりに いまこそ注目すべき戦略情報システム(SIS)とユーソナー

本記事のポイントを3点にまとめます。①戦略情報システム(SIS)とは情報技術を経営戦略と結びつけ競争優位を生み出すための情報システム、②戦略との乖離やデータの分散・品質劣化があると効果を発揮できない、③社内外のデータを統合しセールス・マーケティングの戦略的な問いに答えられる基盤づくりが実践の鍵、という点です。

戦略情報システムは、1980年代に提唱された概念でありながら、「情報を競争の武器として使う」という本質は、現代のB2B企業のセールス・マーケティングにそのまま当てはまります。ターゲットアカウントの選定、リードの優先順位付け、既存顧客の深耕、企業グループを踏まえた営業戦略といったユースケースは、いずれも自社の顧客データと外部の企業データを統合し、鮮度と品質を保つことではじめて機能します。その成功には、経営戦略との結びつき、部門横断の体制、そして信頼できるデータ基盤が不可欠です。

弊社の顧客データ統合ソリューション「ユーソナー」は、社内に分散した顧客情報を統合し、セールス・マーケティングの戦略立案に活用できる状態を作るためのデータ基盤を提供しております。「LBC」という独自のコード体系による顧客情報の管理に加え、日本最大級の企業情報データベースをもとにした企業属性や企業グループ情報、鮮度の高い外部データを継続的に取得することができます。さらに、ユーザーの興味関心や競合との接触状況を推察できるインテントデータや、機械学習によるマッチ度・優先度の付与により、次のベストなアプローチを洞察することが可能です。

詳細についてはぜひこちらのページから、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

uSonar

ユーソナー編集部

MXグループ・編集長

ユーソナー編集部です。
主にBtoB事業を営む企業様に向け、これからの業務のあり方を考える上で有用なデータ活用やデジタル技術に関する情報を発信しています。

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